日本植物病理学会報
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日本のコムギうどんこ病菌(Erysiphe graminis f. sp. tritici)のレースについて
奥 尚難波 成任山下 修一土居 養二
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1987 年 53 巻 4 号 p. 470-477

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抄録
日本各地で1962, 1967, 1984∼1986年に発生したコムギうどんこ病菌(Erysiphe graminis f. sp. tritici)のレースを判別品種の第1葉への接種による切葉培養検定法で調べた。基準判別品種には単一の抵抗性遺伝子を持つAxminster×Cc8, Ulka×Cc8, Asosan×Cc8, Chul×Cc8, Khapli×Cc8の各同質遺伝子系統およびHope,札幌春小麦の7品種を用い,付加的判別品種として,欧州のレースと国内のコムギ育種計画を考慮し,Normandie, Halle Stamm 13471, C.I. 12633, Weihenstepaner M1, Arthur, Vernal, 0224/52およびTransecの8品種を用いた。付加的判別品種は,いずれの菌系に対しても抵抗性を示したが,基準判別品種によって,20のレースが確認された。Chul×Cc8(抵抗性遺伝子:Pm3b)に対して,北海道のレースはいずれも非病原性であったが,中国地方のレースは病原性を示した。一方,全てのレースに対して抵抗性を示した基準判別品種はなかった。従って,うどんこ病抵抗性コムギ品種の育種には,複数の主働抵抗性遺伝子の利用,外国品種や近縁野生種の持つ新たな抵抗性遺伝子の導入,さらに量的抵抗性の利用などが必要と考えられた。
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