4種類のpotyvirus (Bean common mosaic virus (BCMV), blackeye cowpea mosaic virus (BlCMV), azuki bean mosaic virus (AzMV), soybean mosaic virus (SMV))の寄主範囲,伝染,干渉効果,血清学的関係,外被蛋白について比較した。これら4種ウイルスは寄主範囲と種子伝染により容易に区別できた。各ウイルスの抗血清を作製し,0.5%ジョードサリチル酸チリウムを含む寒天を用いて血清学的関係を調べたところBCMVの2系統,BlCMVの2系統,AzMVは血清的に同一であったが,SMV(日本産5系統,タイ産1系統)とはやや遠い類縁関係にあった。日本産とタイ産のSMVの間では血清学的性質にやや差が認められた。しかしこれらウイルスはいずれもturnip mosaic virus (TuMV)との血清学的関係は認められなかった。BCMVとBlCMV, BCMVとAzMV, BlCMVとAzMVの間で,それぞれやや不完全ではあるが干渉効果が認められた。SDSポリアクリルアミド電気泳動により,外被蛋白の分子量を比較したところ,BCMVの2系統,BlCMVの2系統およびAzMVでは32.8×10
3(K),日本産のSMV 5系統では30.1K,タイ産のSMVでは31.5K, TuMVでは34Kであった。
Staphylococcus V8プロテアーゼで分解したペプチッドの電気泳動のパターンは,BCMVの2系統,BlCMVの2系統およびAzMVではほぼ同一であった。また日本産SMVの5系統も同一であった。しかしタイ産SMVとTuMVは他と異なるパターンを示した。この様に5種ウイルスの12分離株の血清学的関係,外被蛋白の分子量およびペプチッドの電気泳動パターンの間で高い相関関係が認められた。以上の結果は,4種popyvirusの中でSMVは別種ウイルスであるが,BCMV, BlCMV, AzMVの3種ウイルスは相互に近縁であり,系統の関係にあることを示すものと考えられる。
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