日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
53 巻, 4 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
  • 松山 宣明, 脇本 哲
    1987 年 53 巻 4 号 p. 449-453
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    抗いもち病菌物質S-1 (C20H32O2)とその関連化合物の感染時および物理・化学的障害時における生成程度を主働抵抗性遺伝子Pi-iをもち,圃場抵抗性程度を異にする3品種についてガスクロマトグラフィーで比較した。抗菌物質の生成は,UV照射およびいもち病菌接種葉において認められたが,その生成程度は組織の褐変崩壊程度と密接に相関していた。一方,化学的障害時あるいは褐点を全く生じないような高度抵抗性の場合には全く生成が見られなかった。抗菌物質生成程度と圃場抵抗性程度とは接種7日後では逆の相関がみられたが,これらの物質と抵抗性との関連については,経時的観察などさらに詳細な検討が必要と考えられる。UV照射による障害の程度は若い葉組織(上位葉)で軽く,加齢の進んだ組織(下位葉)で著しかった。また,圃場抵抗性弱品種イナバワセで軽度であった。このことは,圃場抵抗性弱品種では最上葉展開後暫くの期間,生理的により若い状態すなわちより罹病的状態にあることを示しているとも考えられるが,この点についてはさらに検討する予定である。
  • 塩見 敏樹, 白川 隆, 竹内 昭士郎, 大泉 利勝, 植松 清次
    1987 年 53 巻 4 号 p. 454-459
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1976年頃から,千葉県下で温室メロンの根が地表面に異常に露出する病害が発生した。罹病メロンの根のこぶおよび地表面に露出した毛状根から分離した細菌は,細菌学的性質が斉一で,メロンに自然発病株と同一の病徴を示したほか,キュウリ,スイカ,トマト,バラなどにも病原性を示した。
    細菌学的性質および接種試験の結果から,供試細菌をAgrobacterium rhizogenes (Ricker, Banfield, Wright, Keitt & Sagen 1930) Conn 1942のbiovar 1と同定した。病名をメロン毛根病(hairy root of melon)と呼ぶことを提唱した。
  • Surang KARNJANARAT, 土屋 健一, 松山 宣明, 脇本 哲
    1987 年 53 巻 4 号 p. 460-469
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    日本及びタイの圃場あるいは市場で採集した試料から分離した多数のE. carotovora菌株(日本産51・タイ産29)を用いて,それらの病原性及び生理・生化学的性質を比較した。各菌株はジャガイモ,トマト,タマネギ及びキュウリに対する病原性に基づき4種類の病原型に分けられた。また,しょ糖からの還元物質産生性,カゼイン水解性,インドール産生性,パラチノース,ソルビット及びα-メチルグルコンドからの酸産生性に基づいて,供試菌株は7種類の生理型(biovars)に分けられた。生理型A∼Cに属する日本産菌株は36Cにおける生育能を除いてはE.C. subsp. atroseptica (Eca)と類似していた。その他の生理型に属する菌株はE.C. subsp. carotovora (Ecc)の性質と一致した。生理型と病原型との間には関連性は認められなかった。
  • 奥 尚, 難波 成任, 山下 修一, 土居 養二
    1987 年 53 巻 4 号 p. 470-477
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    日本各地で1962, 1967, 1984∼1986年に発生したコムギうどんこ病菌(Erysiphe graminis f. sp. tritici)のレースを判別品種の第1葉への接種による切葉培養検定法で調べた。基準判別品種には単一の抵抗性遺伝子を持つAxminster×Cc8, Ulka×Cc8, Asosan×Cc8, Chul×Cc8, Khapli×Cc8の各同質遺伝子系統およびHope,札幌春小麦の7品種を用い,付加的判別品種として,欧州のレースと国内のコムギ育種計画を考慮し,Normandie, Halle Stamm 13471, C.I. 12633, Weihenstepaner M1, Arthur, Vernal, 0224/52およびTransecの8品種を用いた。付加的判別品種は,いずれの菌系に対しても抵抗性を示したが,基準判別品種によって,20のレースが確認された。Chul×Cc8(抵抗性遺伝子:Pm3b)に対して,北海道のレースはいずれも非病原性であったが,中国地方のレースは病原性を示した。一方,全てのレースに対して抵抗性を示した基準判別品種はなかった。従って,うどんこ病抵抗性コムギ品種の育種には,複数の主働抵抗性遺伝子の利用,外国品種や近縁野生種の持つ新たな抵抗性遺伝子の導入,さらに量的抵抗性の利用などが必要と考えられた。
  • 土崎 常男, 大村 敏博
    1987 年 53 巻 4 号 p. 478-488
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    4種類のpotyvirus (Bean common mosaic virus (BCMV), blackeye cowpea mosaic virus (BlCMV), azuki bean mosaic virus (AzMV), soybean mosaic virus (SMV))の寄主範囲,伝染,干渉効果,血清学的関係,外被蛋白について比較した。これら4種ウイルスは寄主範囲と種子伝染により容易に区別できた。各ウイルスの抗血清を作製し,0.5%ジョードサリチル酸チリウムを含む寒天を用いて血清学的関係を調べたところBCMVの2系統,BlCMVの2系統,AzMVは血清的に同一であったが,SMV(日本産5系統,タイ産1系統)とはやや遠い類縁関係にあった。日本産とタイ産のSMVの間では血清学的性質にやや差が認められた。しかしこれらウイルスはいずれもturnip mosaic virus (TuMV)との血清学的関係は認められなかった。BCMVとBlCMV, BCMVとAzMV, BlCMVとAzMVの間で,それぞれやや不完全ではあるが干渉効果が認められた。SDSポリアクリルアミド電気泳動により,外被蛋白の分子量を比較したところ,BCMVの2系統,BlCMVの2系統およびAzMVでは32.8×103(K),日本産のSMV 5系統では30.1K,タイ産のSMVでは31.5K, TuMVでは34Kであった。Staphylococcus V8プロテアーゼで分解したペプチッドの電気泳動のパターンは,BCMVの2系統,BlCMVの2系統およびAzMVではほぼ同一であった。また日本産SMVの5系統も同一であった。しかしタイ産SMVとTuMVは他と異なるパターンを示した。この様に5種ウイルスの12分離株の血清学的関係,外被蛋白の分子量およびペプチッドの電気泳動パターンの間で高い相関関係が認められた。以上の結果は,4種popyvirusの中でSMVは別種ウイルスであるが,BCMV, BlCMV, AzMVの3種ウイルスは相互に近縁であり,系統の関係にあることを示すものと考えられる。
  • 林 宣夫
    1987 年 53 巻 4 号 p. 489-494
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    コンニャク葉枯病菌Ps. pseudoalcaligenes subsp. konjaciを罹病残渣あるいは土壌中から検出するための選択培地を作成した。その組成は以下の通りである。0.5g KH2PO4, 3.0g Na2HPO4・12H2O, 6.0g酒石酸ナトリウム,2.0g (NH4)2SO4, 10μg L-ロイシン,0.29g MgSO4・7H2O, 67mg CaCl2・2H2O, 0.25mg Na2M0O4・2H2O, 20mgフェノールレッド,2mgメチルバイオレット,12.5mgアンピシリンソーダ,25mgシクロヘキシミド,50mgチラムーベノミル水和剤,15g寒天,1l蒸留水。本培地上で,コンニャク葉枯病菌は28C, 7日後に直径約1.5mmの穹隆状で中央部淡紫桃色,周辺部透明な円形集落を形成した。本細菌の本培地における集落形成率はKing B培地よりも高く,また,グルコース及び酵母エキス加用普通寒天培地で分離される土壌細菌の81.6∼92.5%を本培地は抑制した。本培地を用いて罹病残渣から容易に本病細菌を検出することができた。
  • 阿久津 克己, 入野 達之, 塚本 貴敬, 奥山 哲
    1987 年 53 巻 4 号 p. 495-506
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    灰色かび病菌(Botrytis cinerea)のベノミル感性菌・IPCR-1 (MIC<3ppm)をPSA培地で予め培養し,その菌叢の中心部にベノミル耐性菌・IHES-3 (MIC>3,000ppm)菌糸体片を接触・培養した後,IPCR-1菌叢より菌糸体片を採取し,ベノミル添加培地上で耐性を検定した。ベノミル耐性を示す菌糸体片(PH-1)が検出された。PH-1は,ベノミル耐性(MIC=1,000ppm),菌叢の形状,生育速度,菌糸の形状,核の配列様式,キュウリ葉に対する病原性が,IPCR-1, IHES-3菌株と異なり,ほぼ両菌株の間に位置した。PH-1の性質は,継代培養に因って変化はみられず,安定していた。次にIPCR-1とIHES-3の菌叢接触部を光顕観察した結果,菌糸融合が観察された。両菌株の菌糸融合についてスライドグラス上で詳細に調べた結果,6タイプの融合(接合菌糸による胞子間,胞子・発芽管間,発芽管間,発芽管・菌糸間,菌糸間の融合と菌糸間の直接融合)が認められ,その頻度は2.5%であった。融合した菌糸細胞で,核の移行は観察されたが,核融合の有無は確認できなかった。
  • 高橋 賢司, 山口 武夫
    1987 年 53 巻 4 号 p. 507-515
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    土壌中における根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae)休眠胞子の定量は,これまで長時間の操作と休眠胞子の判別に熟練を必要とした。そこで螢光顕微鏡を利用した簡易な定量法について検討した。汚染土10gにtween 80 (0.05%水溶液)を混合し,2∼3時間撹拌した。その土壌懸濁液を32, 60, 120, 200および400メッシュの篩で順次〓過した後,〓液を遠心分離(2,500rpm, 10分間)した。沈澱部を蒸留水に懸濁した後,再度遠心分離して同様の操作を行い被検液を調製した。被検液をcalcofluor white MR2 (0.1%水溶液)と等量混合後,落射螢光顕微鏡で観察した。休眠胞子は螢光発色し,微小土壌粒子と明瞭に判別され,休眠胞子数の定量が可能であった。本定量法は,休眠胞子濃度105個/g・乾土以上の高濃度汚染土で高い検出精度が得られ,107個の汚染土からの休眠胞子の回収率は100.9±5.0%であった。104個以下の低濃度汚染土では検出精度が高濃度の場合ほど高くなかったが,103個付近まで定量は可能であった。本定量法は,操作と休眠胞子観察の簡易性,検出精度の点において従来の定量法より優れていると考える。また本定量法は,異なる5種の土壌に対し適用できた。本定量法を用いて根こぶ病発生圃場における休眠胞子密度を調べた結果,調査した6圃場全てで105個/g・乾土以上の休眠胞子が検出された。
  • 稲垣 公治, 内記 隆
    1987 年 53 巻 4 号 p. 516-522
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネの菌核病病斑から得られた灰色菌核病菌および褐色菌核病菌の菌株を菌糸融合により類別し,その結果得られた菌株群と水田内における菌核病の発生との関係について調べた。イネ1株内の同一菌核病による病斑から得られた多くの菌株は,PSA上での菌そう形態がよく類似しており,これらの菌株間の菌糸融合は通常致死反応を伴なわない完全融合であった。したがって,イネの1株内には1個の完全融合群(菌株間の菌糸融合の様式が完全融合である菌株群)が優占して菌核病をひき起こしている場合の多いことが分かった。灰色菌核病や褐色菌核病が水田内で広範囲に発生している場合,水田内の30∼35地点(地点間の間隔は4.5∼5.0m)から得られた菌核病菌の22∼71菌株は,少なくとも9∼34個の完全融合群に類別できた。多くの場合,1個の完全融合群は水田内のごく限られた範囲内に分布する傾向があった。
  • 山田 利博
    1987 年 53 巻 4 号 p. 523-530
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    4年生クロマツの主軸にマツノザイセンチュウを接種し,枯損過程におけるクロマツ組織の脂質過酸化の程度の変化および活性酸素の消去に関与する酵素の活性の変化を当年生枝について調べた。脂質過酸化の指標であるマロンジアルデヒド(MDA)濃度は樹皮,木部共,接種後次第に増大した後,枯死に伴い低下した。MDA濃度の増大は解剖観察でみた組織の破壊,変性の大きさおよび線虫の増殖と対応していた。可溶性タンパク質含量および樹皮のペルオキシダーゼ活性はMDA濃度と似た変化を示したが,木部のペルオキシダーゼ活性は樹皮のそれよりも早く増大した。木部のスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)活性は接種後4週間目から低下し,木部のカタラーゼ活性は接種後次第に低下した。樹皮にはSOD活性は殆ど,またカタラーゼ活性はまったく認められなかった。材線虫病の進展の過程に膜の損傷-脂質過酸化-が含まれることが示唆される。
  • 有江 力, 難波 成任, 山下 修一, 土居 養二, 木嶋 利男
    1987 年 53 巻 4 号 p. 531-539
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ユウガオつる割病はユウガオの重要な土壌伝染性病害であるが,その連作にかかわらず,発生が認められない圃場が存在し,これらの圃場ではユウガオと共にネギの混植が慣行的に行われている例が多かった。そこで,この原因を調べたところ,現地のネギ地下部からは高率にPseudomonas gladioliが分離され,これらはユウガオつる割病菌(Fusarium oxysporum f. sp. lagenariae)に対して高い抗菌性を示した。そこで,Pseudomonas gladioliを中心に,20種の植物より分離したPseudomonas属細菌4種90菌株について,つる割病菌に対して強い抗菌性を有し,かつネギの地下部に定着性のある菌株を探究したところ,P. gladioli M-2196が選抜された。ネギおよびニラの地下部に本菌株を浸根接種し,ユウガオつる割病汚染土にユウガオと混植したところ,つる割病の発病が著しく抑制され,その実用性が確認された。以上の結果,抗菌性を持つ細菌と定着植物を用いた土壌病害の生物的防除の可能性が明らかになった。
  • 長井 雄治, 崔 容文, 栃原 比呂志
    1987 年 53 巻 4 号 p. 540-543
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    A new strain of TMV was isolated from both commercial seeds of sweet pepper cv. Tosa-Green and seedlings of sweet pepper cv. Shin-Sakigake showing mild mosaic in Chiba Prefecture. The mosaic symptom and local lesions were developed on the respective TMV-sensitive and resistant cultivars of sweet pepper infected with the virus but the virus was never infectious to tomatoes. Since it was serologically different from any of ordinary, tomato and pepper strains of TMV, it was designated as TMV-U.
  • 小島 誠, 新津 純一, 高橋 亘
    1987 年 53 巻 4 号 p. 544-548
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    オオムギ黄萎ウイルスの1分離株(BYDV805)はムギクビレアブラムシで媒介されるが,トウモロコシアブラムシ,ムギミドリアブラムシではしない。本実験で新たにムギヒゲナガアブラムシ(Sitobion avenae)によっても永続的に媒介されることが明らかとなった。2種のアブラムシの媒介性を比較するため,単独接種による3時間毎の継続接種試験を行なったところ,ムギクビレアブラムシの方がムギヒゲナガアブラムシより媒介率が高かった。また,プロビット法による虫体内潜伏期間(LP50)を測定したところ,前者は後者よりLP50も短かく,20C, 24時間の獲得吸汁の場合,前者は28.24時間,後者は31.43時間であった。
  • 森永 傳, 池上 正人, 三浦 謹一郎
    1987 年 53 巻 4 号 p. 549-553
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    BGMV 1本鎖DNAの2成分(A, B)を逆転写酵素を用いて,試験管内で2本鎖DNAに変換した。このようにして試験管内で合成された2本鎖DNAを用いて,BGMV DNA AおよびBをそれぞれHind IIIおよびCla I部位でpBR322に連結してクローニングした。BGMV DNA全域のクローニングは,pBR322に挿入されたDNAの長さおよび挿入されたDNAを種々の制限酵素で切断し生じた断片の長さを測定することによって確認した。
  • 沼田 司, 佐藤 守, 酒井 富久美
    1987 年 53 巻 4 号 p. 554-556
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    P. syringae pv. atropurpurea NIAES 1309株をタバコ培養細胞と共存培養させると条件によって本菌のコロナチン産生支配プラスミドpCOR1が高頻度に除去された。その離脱率はタバコ細胞の生育日数に影響され17日間培養のタバコ細胞との共存培養で3%, 40日間培養細胞で7∼35%, 60日間培養細胞で4∼12%の率でpCOR1の離脱が起こった。一方2日間培養細胞(プロトプラスト)との共存培養,あるいは培地のみでは全く起こらなかった。これらの結果より,本菌のプラスミドの離脱は分裂増殖したタバコ細胞から産生される何らかの物質により誘導されるものと推察した。
  • 大木 理, 井上 忠男
    1987 年 53 巻 4 号 p. 557-561
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    微生物等の培地用として市販されているGelriteの二重拡散法担体としての利用を検討した。CMVの純化ウイルスと抗血清を用い,0.1Mトリス塩酸緩衝液pH 8.0, 0.85% NaCl, 0.2% NaN3に0.15% Gelrite, 0.2% MgCl2・6H2O, 0.3% SDSを添加したゲル(スライドグラスあたり1.5ml)を使って同条件の0.5%精製寒天ゲルと比較したところ,Gelriteゲルでは室温で3∼5時間で結果を判定でき,約50ng/mlの純化CMV,感染タバコ葉の256倍希釈汁液中のCMVを検出でき,所要時間は寒天ゲルの約半分で検出精度は100倍程度すぐれていることが分かった。沈降帯はTMV等の長形ウイルスでも明瞭に観察されたのでウイルス抗原の検出診断に広く利用できるものと考えられる。また透明度が高いため,エピトープ分析などにも有用と思われる。
  • 小林 研三, 吉田 政博, 中山 武則, 古賀 成司
    1987 年 53 巻 4 号 p. 562-565
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    In March 1982, pale brownish tumors, the size of which was around 2-15mm were found on the roots of melon (root stock cultivar: Kenkyaku) growing in Kumamoto prefecture, Japan. The symptom resembled to that caused by nematodes. However, nematodes could not be found in the tumor and nematocide was not effective to control the disease. The tumors discolored to brown or black with their development and the plants wilted in the daytime and finally withered. A kind of bacterium was isolated from the surface-unsterilized tumors. The young root of melon artificially inoculated with the isolate produced tumors showing peculiar appearance. The causal pathogen was identified as a species belonging to Actinomycetales from the result of morphological observation. This is the first record of the disease of melon caused by Actinomycetales and the name “root tumor of melon” was proposed.
  • 竹中 重仁, 吉野 嶺一
    1987 年 53 巻 4 号 p. 566-569
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    コムギ品種農林61号(抵抗性弱)とユキチャボ(強)への雪腐褐色小粒菌核病菌(Typhula incarnata)の侵入過程を光学顕微鏡で観察した。本菌の菌糸による葉身への侵入方法として,気孔侵入および集合菌糸による角皮侵入が接種3日後に両品種において観察された。接種3∼6日後の葉身への本菌の侵入率を比較すると,わずかではあるが,常に農林61号の侵入率の方がユキチャボのそれより高く,また第3葉における侵入速度も農林61号の方が速かった。これらの結果から,本菌に対するコムギの抵抗性の品種間差は,侵入過程においてもわずかに存在するものと考えられた。
  • 有江 力, 難波 成任, 山下 修一, 土居 養二, 木嶋 利男
    1987 年 53 巻 4 号 p. 570-575
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1985年5月,栃木県今市市の鉢植えおよび苗床のエキザカム(Exacum affine Balf.)で茎葉に萎ちょう,枝枯れを生じ,株枯れを起こす未記載の病害が見出された。病株では地際部より発病枝に至る茎内部に褐変が認められた。この褐変部より分離された糸状菌はPDA培地上で白∼白橙色の菌そうを形成し,分生胞子はVerticillium型および,Gliocladium型の分生子柄から生じるフィアライド上に形成され,子のうはこん棒∼円柱状で,2胞の子のう胞子を8個含んでいた。これらの性状より,本菌はNectria gliocladioides Smalley et Hansenと同定した。また本菌によりエキザカムに原病徴が再現されたので,本病をエキザカム株枯病(stem blight of exacum)としたい。本菌による植物病害はこれまで記載されていないが,今後土壌病原菌としても十分な注意が必要と考えられた。
feedback
Top