抄録
高圧滅菌したキュウリ茎片を高圧滅菌後微生物相を回復させた土壌に埋没し,その周辺部におけるPythium butleriとP. zingiberumの行動を比較した。P. zingiberumに比べ, P. butleriの卵胞子は茎片の周辺部で高い発芽率を示した。また, P. butleriの菌糸は土壌中をより速く伸長し,より少数の卵胞子によっても茎片に定着することができた。したがって,両菌のキュウリ茎片への定着率の違いは,土壌に埋没した茎片周辺部における卵胞子の発芽能と菌糸の伸長速度の差に起因すると考えられた。さらに, P. zingiberumに比べ, P. butleriは定着した後の茎片から長期にわたって分離され,土壌中におけるより高い生存能が認められた。P. butleriは茎片周辺部でより多くの卵胞子を形成した。しかし,両菌菌糸の土壌中における生存能には差が認められなかった。したがって,土壌中に埋没されたキュウリ茎片に定着した後に示す両菌の生存能の差異は,同茎片内における卵胞子形成能の違いによると推察された。