日本植物病理学会報
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エンドウ茎えそウイルス感染エンドウ細胞内にみられる病変
尾崎 武司井上 忠男
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1988 年 54 巻 2 号 p. 204-209

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抄録

エンドウ茎えそウイルス(Pea stem necrosis virus, PSNV)とsaguaro cactus virus(SCV)の粒子形態と細胞内所在様式ならびに病変について電顕観察を行った。
PSNVは約34nmの球状で,個々の粒子は丸味を帯びSCVとの識別は困難であった。PSNV感染エンドウ葉ではウイルス粒子は各種細胞の細胞質中に多量に存在したが,核などの小器官内には観察されなかった。なお,え死部以外ではウイルス粒子はすべて散在していた。PSNV感染細胞内の多くのミ5コンドリアは変形し,ストロマの拡張,クリステ数の減少,クリステ内膜間のスペースの拡張などの異常が観察された。変形したミトコンドリアの内膜と外膜の間には径約200nm前後の単層膜を有する円~楕円形の小胞(multivesicular body, MVB)が多数観察された。個々のMVBは中空に見える場合,顆粒状物質を含む場合および核酸様の繊維物質を含む場合の三つのタイプが観察された。SCV感染C. quinoaではウイルス粒子はPSNVの場合と同様な所在様式を示したが,ミトコンドリアには顕著な病変は認められなかった。
PSNVは本実験結果とその他の諸性状から,現時点では最近設置されたcarmovirusグループへ所属させることが妥当であると考えられた。

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