静岡県,香川県および徳島県でチャ芽,野菜およびモクレンの花から分離した氷核活性細菌について分類学的研究を行った。1978~80年静岡県で, 1987年香川県でチャ芽から分離した氷核活性細菌は,後者の1菌株を除きすべて
Erwinia ananasと同定された。これに対し, 1986年および1987年の両年に静岡県で,また1987年に徳島県で分離された氷核活性細菌は前者の1菌株を除き,すべて
Xanthomonas属細菌であった。このxanthomonadは最高生育温度等2, 3の性質を除き,形態,生理・生化学的性質から
X. campestrisと同定されたが,チャをはじめ供試した数種野菜には病原性を示さず,ジャガイモ切片をわずかに軟化したのみであった。この結果,本菌を
X. campestrisの新亜種と位置づけるのが妥当と考えた。タイサイ等の緑葉野菜,チャ芽およびモクレンの花から分離した氷核活性pseudomonadはすべて
Pseudomonas syringaeと同じ細菌学的性質を示した。これらは分離した植物,野菜類,
Delphinium spp. に病原性を示さなかったが,ライラックに対しては接種した菌株のすべてが病原性を示したことから
P. syringae pv.
syringaeと同定した。ワサビから分離したpseudomonadは
P. cichoriiに類似した性質を示したが,蛍光色素非産生,非病原性等からこれとは異なる細菌と判定した。これらの氷核活性細菌は,いずれも高い氷核活性を示し,過冷却温度は-2.8~-3.0Cにあったが,ワサビ菌株は-4C~-5Cであった。
抄録全体を表示