日本植物病理学会報
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ブラジルにおけるコショウ樹ネクトリア病病原菌の子嚢胞子飛散
浜田 正博内田 勉津田 盛也
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1988 年 54 巻 3 号 p. 303-308

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抄録

ブルジルのアマゾン地域で猛威をふるっているコショウ樹ネクトリア病病原菌の子嚢胞子飛散について調べた。本病原菌の子嚢殻は,交配型を異にする2菌株を培地上で対峙培養すると簡単に形成される。コショウ園の枯死木や罹病樹患部からも容易に検出された。ブラジル,パラ州トメアス郡内の地域を異にする11園から96個の子嚢殻を採集して,その病原性を調べたところ,約70%以上のものに認めた。子嚢に湿気をあたえると子嚢胞子は僅かな上昇気流にのって離脱した。圃場実験の結果,設定条件の上限である,垂直方向170cm,および,水平方向300cmの地点でも,おのおの,子嚢胞子が捕捉できた。また,子嚢胞子は, 24時間風乾した後においても,約60%の発芽率を示し,耐乾性をもつことが明らかであった。これらの結果からアマゾン地域におけるコショウ樹ネクトリア病流行の一因として,苗木による伝搬,土壌・施肥の問題の他,子嚢胞子の飛散による空中伝搬が明らかとなった。いわゆる“Fusarium”病において,子嚢胞子伝搬が証明された数少ない例のひとつであろう。本病病名として,コショウ樹ネクトリア病がより適切と考えた。

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