カンキツ新葉に黒点病菌柄胞子を接種し,露光下に保つと黒点病斑形成,ファイトァレキシン(スコパロン)生成が起こり,侵入病原菌は病斑内に封じ込められた。一方,暗黒下では被侵入細胞の壊死,褐変が起こらず,黒点病斑形成やファイトアレキシン生成は起こらなかった。侵入病原菌は葉組織内を伸長し,被接種葉の離脱,軟化が起こり,ついには柄子殻および柄胞子が形成された。機械的付傷に対しても同様で,露光下では被害細胞が壊死,褐変し,傷害痕からはファイトアレキシンが検出された。しかし,暗黒下では傷面で細胞の壊死,褐変は起こらず,ファイトアレキシンも検出されなかった。黒点病菌柄胞子を接種し,温度の異なる条件下に保ったところ, 25および20C区では接種3日後から接種部の細胞が壊死,褐変し,黒点病斑が形成された。しかし,温度の低下とともに褐変の程度が弱くなり, 10Cではほとんどみられなかった。機械的付傷に対する反応も同様で, 25Cで最も褐変の程度が強く,傷害痕が形成されたが,温度の低下とともにその度合いは弱くなり, 10および5Cでは褐変は認められず,傷害痕は形成されなかった。病原菌接種および機械的付傷葉におけるファイトアレキシン生成程度も25Cで最も多く,温度の低下とともに生成量は減少し, 10C以下では検出されなかった。以上の結果から,カンキツの自己防衛反応は光および温度に強く影響され光照射条件および比較的高温条件下で大であった。そして,この防衛反応は侵入病原菌の進展阻止に有効であることが示された。
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