日本植物病理学会報
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Cochiiobolus heterostrophusの突然変異誘発に対する突然変異源の比較
田中 千尋久保 康之津田 盛也
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1988 年 54 巻 4 号 p. 503-509

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抄録

4種の突然変異源[N-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(MNNG),メタンスルホン酸エチル(EMS), 紫外線(UV),ガンマ線(γ-ray)]のトウモロコシごま葉枯れ病菌分生子に対する,致死および突然変異誘発効果を調べた。MNNGおよびUVでは処理時間の増加とともに,分生子生存率は直線的に減少した。EMSおよびγ-ray処理では,分生子生存率が直線的に減少せず,生存曲線は,多撃説により導かれる曲線に類似した。γ-ray処理では分生子生存率に線量率依存性が認められた。突然変異処理によって得た4種の色素合成欠損株をマーカーとし,それぞれの処理区での突然変異株の最大出現率を求めたところ次の結果を得た。MNNGでは生存率5.5%,出現率0.51%, EMSでは生存率1.4%, 出現率0.43%, UVでは生存率13.2%,出現率0.05%, γ-rayでは生存率2.6%,出現率O.07%であった。以上の結果, MNNGおよびEMSはUVおよびγ-rayより高い突然変異誘発能をもつことが判明した。しかしMNNG処理では,生存率を低くすると継代培養中に死滅する変異株が多く出現し,生存率5%前後の処理が最適であった。

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