日本植物病理学会報
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プロテインA-金コロイド法によるジャガイモXウイルス感染タバコ細胞内のウイルス抗原局在の観察
細川 大二郎渡辺 実
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1988 年 54 巻 5 号 p. 557-564

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抄録

ジャガイモXウイルス(PVX)感染細胞におけるウイルス抗原の局在をプロテインA-コロイド法を用いて検討した。
金粒子の標識は細胞質に形成され始めた薄板状封入体の周囲に最初に観察された。その後,薄板状封入体は発達し,金粒子の標識の認められた部位の一部にウイルス粒子の小さな集塊が観察されるようになった。感染の進んだ細胞では細胞質に多数の薄板状封入体が発達し,その近傍にはウイルス粒子が大きな集塊となり,あるいは散在して観察された。これらでは金粒子の標識がウイルス粒子上と,さらに細胞質基質ではウイルス粒子の分布していない部位にも多数観察され,ウィルス抗原が遊離の状態で多量に集積すると考えられた。しかし,薄板状封入体の薄板とそれに付着した顆粒には金粒子の標識は認められなかった。また核,葉緑体,ミトコンドリア,マイクロボディには金粒子の標識は観察されず,これらの器官はウイルス抗原の合成の場ではないと考えられた。液胞内には多くの場合,金粒子の標識は認められなかったが,細胞質にウイルス粒子が多数集積した近傍の液胞には,ウイルス抗原が細胞質から液胞内へ遊離した状態で分布することがあった。

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