日本植物病理学会報
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54 巻, 5 号
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  • 細川 大二郎, 渡辺 実
    1988 年 54 巻 5 号 p. 557-564
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ジャガイモXウイルス(PVX)感染細胞におけるウイルス抗原の局在をプロテインA-コロイド法を用いて検討した。
    金粒子の標識は細胞質に形成され始めた薄板状封入体の周囲に最初に観察された。その後,薄板状封入体は発達し,金粒子の標識の認められた部位の一部にウイルス粒子の小さな集塊が観察されるようになった。感染の進んだ細胞では細胞質に多数の薄板状封入体が発達し,その近傍にはウイルス粒子が大きな集塊となり,あるいは散在して観察された。これらでは金粒子の標識がウイルス粒子上と,さらに細胞質基質ではウイルス粒子の分布していない部位にも多数観察され,ウィルス抗原が遊離の状態で多量に集積すると考えられた。しかし,薄板状封入体の薄板とそれに付着した顆粒には金粒子の標識は認められなかった。また核,葉緑体,ミトコンドリア,マイクロボディには金粒子の標識は観察されず,これらの器官はウイルス抗原の合成の場ではないと考えられた。液胞内には多くの場合,金粒子の標識は認められなかったが,細胞質にウイルス粒子が多数集積した近傍の液胞には,ウイルス抗原が細胞質から液胞内へ遊離した状態で分布することがあった。
  • 渡辺 恒雄, 植松 清次, 井上 喜典
    1988 年 54 巻 5 号 p. 565-570
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    四国地方の土壌から分離したPrthium菌のキュウリ,コマツナとクロマツへの病原性を二つの方法を用いて試験した。まず13菌株を用いたポットによるキュウリへの接種試験ではP. aphanidermatumの3菌株,次いでP. spinosumの2菌株の病原性が強かったが,他の8菌株は,まったく病原性がないか非常に弱かった。寒天培養覆土接種法では23菌株を供試し,コマツナに対してはP. ultimumの1菌株, P. aphanidermatumの3菌株を含む7菌株の病原性が強く, 20%以上の被害率であったが,他の菌株の病原性は弱いかまったく認められなかった。またクロマツへのP. aphanidermatumP. spinosumなどの病原性は認められたが,その被害率は25%以下であった。
  • 上運天 博
    1988 年 54 巻 5 号 p. 571-576
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネ白葉枯病菌繊維状ファージXfおよびXf2 DNAの切断点地図を作成する目的でファージ感染菌体から複製型環状二本鎖DNA(RF)を抽出し, 6塩基対の認識部位をもつ制限酵素で消化した。Xf-RFは制限酵素BamHI, HindIII, SmaIおよびStuIにより,それぞれ異なる1ヵ所で切断された。また, Xf2-RFはBamHIおよびXbaIにより,それぞれ異なる1ヵ所で切断され, PvuIIおよびEcoRIにより2ヵ所で切断された。これらの制限酵素を種々組み合わせてXf-RFおよびXf2-RFを消化し,生じた各断片の電気泳動パターンおよび各断片の分子量に基づき, Xf-RFおよびXf2-RFの制限酵素切断点地図を作成した。
  • 久能 均, 小村 朋三, 山岡 直人, 小林 一成
    1988 年 54 巻 5 号 p. 577-583
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    Erysiphe graminisの付着器は第一突起からの侵入に失敗すると,第二突起を生じて再び侵入を試みる。第一突起からの侵入に失敗すると,侵入をうけた子葉鞘細胞の拒絶性が急速に高まる。高揚したこの細胞拒絶性と第二突起からの侵入成否について検討した。第二突起の侵入は,通常第一突起の侵入開始8~9時間後におこる。第一突起と第二突起が同一子葉鞘細胞に侵入を試みた場合には,第二突起の侵入成功率(吸器形成率)は約9%であり,第一突起の侵入失敗の影響を受けていた。第一突起が侵入を失敗した細胞の隣の細胞に第二突起が侵入を試みた場合には,両突起の侵入時間差9時間を境にして第二突起の侵入成功率に有意差が現われた。すなわち,第一突起が侵入してから9時間以内に第二突起が侵入を試みた場合には,第二突起の侵入成功率は29.5%であったが, 9~9.75時間では10%, 10時間以上では0%となった。この結果から,第一突起の侵入失敗によって高められた細胞の拒絶性は,約9時間後に隣接細胞に移行すると推定された。この仮説は第一突起からの侵入が失敗した細胞に隣接する細胞に別の胞子の付着器を移植し,その侵入行動を観察することによって裏づけられた。以上の結果は,第一突起が侵入に失敗した細胞の隣の細胞に第二突起が侵入を試みることによって,第一突起によって高められた細胞拒絶性が結果的に回避されていることを示している。
  • 岩崎 真人, 稲葉 忠興
    1988 年 54 巻 5 号 p. 584-592
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1986年,香川県下でカボチャ台接ぎ木キュウリに原因不明の萎凋症が発生した。萎凋株の上位葉はモザイク症状を呈していた。萎凋株の上位葉を採取し,ウイルスの種類を調べた。萎凋株は,ズッキーニ黄斑モザイクウイルス(ZYMV)に単独感染,キュウリモザイクウイルス(CMV)とZYMVに混合感染, CMVとカボチャモザイクウイルスー2(WMV-2)に混合感染,または, CMV, ZYMV, WMV-2に混合感染していた。これらの採取標本をカボチャ台接ぎ木キュウリと自根キュウリに汁液接種した。自根キュウリではまったく萎凋は生じなかった。これに対し,接ぎ木キュウリでは, ZYMV単独感染またはCMVとWMV-2の混合感染標本を接種すると低率で軽度の萎凋, CMVとZYMVの混合感染またはCMV, ZYMV, WMV-2の混合感染標本を接種すると高率で重度の萎凋が生じた。次に, CMV, ZYMV, WMV-2の単分離株を供試し,各ウイルスを単独または混合して接ぎ木および自根キュウリに接種した。自根キュウリではいずれの接種でも萎凋はまったく生じなかった。これに対し,接ぎ木キュウリでは, CMVまたはWMV-2の単独接種, ZYMVとWMV-2の混合接種では萎凋は生じなかったが, ZYMV単独接種またはCMVとWMV-2の混合接種では低率で軽度の萎凋, CMVとZYMVの混合接種またはCMV, ZYMV, WMV-2の混合接種では高率で重度の萎凋が生じた。以上の結果から,カボチャ台接ぎ木キュウリがZYMVに単独感染またはCMVとWMV-2に混合感染すると低率で軽度の萎凋, CMVとZYMVに混合感染またはCMV, ZYMV, WMV-2に混合感染すると高率で重度の萎凋が生ずることが判明した。
  • 阿久津 克己, 入野 達之, 久保 明, 奥山 哲, 日比 忠明
    1988 年 54 巻 5 号 p. 593-599
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    灰色かび病菌のジカルボキシイミド系,ベンズイミダゾール系両薬剤に対する耐性菌株(IHES-1~3とCAES-1~7)をMS液体培地で振とう培養した後,その培養ろ液で,感性菌株(IPCR-1)の分生胞子を振とう培養した。培養24時間毎に培養菌体を採取してベノミル,イプロジオン,プロシミドン,ビンクロゾリンの各含有培地で培養し,耐性獲得の有無を検定した。その結果,これらの菌体はジカルボキシイミド系薬剤含有培地で生育し,耐性獲得が認められたが,ベノミル耐性獲得は認められなかった。この方法によって得た13種の耐性菌株は,菌そう形状から3タイプに分けられた。これらの菌株の諸性質は継代培養によって変化が認められなかった。次に両系薬剤耐性菌株(CAES-4)の培養ろ液を熱処理(100 C, 30分間)後, MS培地に透析し,その透析外液中でIPCR-1を振とう培養したところ,同様にジカルボキシイミド系薬剤に対する耐性菌が得られた。その菌そう形状は, CAES-4培養ろ液培養で得た菌株と同様であった。このことからジカルボキシイミド耐性菌株の培養ろ液中に,低分子で耐熱性の薬剤耐性誘導因子が存在することが示唆された。
  • 前田 孚憲, 佐古 宣道, 井上 成信
    1988 年 54 巻 5 号 p. 600-605
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    純化したキュウリモザイクウイルス黄斑系(CMV-Y)で免疫したBALB/cマウスから得た脾細胞と同系マウス由来の骨髄腫細胞, P3-X63-Ag8-UlとをPEG法により融合させた。融合細胞をELISAと限界希釈法により選抜,単クローン化し抗体産生クローンを得た。これらをマウスの腹腔内に注射し,モノクローナル抗体(MAb)を含む腹水を得た。これらの反応性を間接ELISAで調べたところ, 6株はCMV-YとCMV-Z (P血清型)とに同程度反応したが, 1株は両系統に対する反応性に差がみられた。両系統に共通のepitopeを認識するMAbとアルカリホスファターゼとを結合させてコンジュゲートを作成しDAS ELISAを行ったところ,このコンジュゲートはウサギのポリクローナル抗体で作成したコンジュゲートよりも活性が約8倍高く,またウイルスの検出感度も高かった。さらにMAbコンジュゲートを用いた場合,血清学的にheterologousな系統であるCMV-Zも効率よく検出することができた。
  • 黒田 慶子, 山田 利博, 峰尾 一彦, 田村 弘忠
    1988 年 54 巻 5 号 p. 606-615
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    11年生クロマツにマツノザイセンチュウを接種し, 1週間ごとの伐倒の前日に根元から染色剤を吸収させて,その上昇パターンから木部の通水異常を検出した。木部含水率を測定し,通水異常との関係を明らかにすると同時に,マツ組織の変化,線虫の増殖との関係を調べた。接種2週後に水分の上昇に乱れが観察され,含水率が低下し始めた。樹幹の木口断面では,放射方向に長く白色の線状ないし紡錘形の部分が,染色部と明確に区分されて出現した。この部分では仮道管は水を失い,気体が入っていた。この現象は「キャビテーション(空洞化)」と呼ばれる。健全な樹木では,木部の水はらせん状に上昇するが,線虫接種木ではキャビテーション部位で流れが妨げられて通水パターンが乱れる。キャビテーションの範囲はしだいに拡大し, 4週後には木口断面のほぼ全面を覆った。マツ組織の変化と線虫の増殖は4週後,木部の含水率が健全木の30%に低下してからであった。これらの事実から,形成層や師部の壊死はキャビテーション部位に接した後に水不足により起こったものと判断した。仮道管のキャビテーションがマツの枯死の直接的原因である可能性が高い。他方,漏出した樹脂による仮道管通水の機械的阻害は,非常に小さな範囲に留まるため,枯死の主因とは考えにくい。染色の阻止状況から,疎水性の物質がキャビテーション部位の仮道管内に存在することが示唆された。マツノザイセンチュウがなぜマツを枯らすのかを明らかにするためには,まずキャビテーションの原因を解明する必要がある。
  • 富樫 二郎, 高橋 昭二, 柴田 稔
    1988 年 54 巻 5 号 p. 616-619
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    The red turnip, Brassica campestris L. (rapifera group), “cv. Atsumi-kabu” grown in burnt fields in Atsumi-machi, Yamagata Prefecture, Japan, showed wilting followed by yellow discoloration of leaves from September to October in 1986. A few small, water-soaked soft-rot lesions were formed on the bases of leaf petioles and the roots. They gradually developed, and finally whole plants decayed. Soft-rot Erwinia-like bacteria were predominantly isolated from the diseased plants. Pathogenicities and bacteriological characteristics of the isolates were identical with those of Erwinia carotovora subsp. carotovora. From these results, the present symptoms on the red turnip, “Atsumi-kabu”, was suggested to be caused by E. carotovora subsp. carotovora. This is the first report on the occurrence of soft rot on the vegetables in burnt fields in Japan.
  • 細川 大二郎, 渡辺 実
    1988 年 54 巻 5 号 p. 620-624
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    プロテインA-金コロイド法を用いて,キュウリモザイクウイルス(CMV)感染タバコ葉細胞におけるウイルス抗原の局在を検討した。金粒子の標識は細胞質基質(サイトゾル)全体にほぼ一様に認められた。しかし,葉緑体,ミトコンドリア,マイクロボディには金粒子の標識は認められなかった。核では金粒子の標識が核質内には少数,核小体の顆粒状領域には多数観察されたが,核小体の繊維状領域には認められなかった。液胞内では金粒子は主として,ウイルス粒子の結晶上に観察された。
  • 福田 健二, 鈴木 和夫
    1988 年 54 巻 5 号 p. 625-628
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    材線虫病による年越し枯れのアカマツについて,病徴の進展に伴う材部の電気抵抗値および葉の水分生理特性の変化について検討を加えた。材部の電気抵抗値は,秋から冬にかけてはほとんどが正常な値を示したが,感染翌年の春~初夏にかけて180kΩ未満の値をとるものが多く,春季の材内におけるミクロフロラの変化が示唆された。P-V曲線から得られた葉の水分生理特性は,枯死直前の春~初夏まで正常な季節変化を示して,細胞壁弾性率(ε)には変化が認められなかった。
  • 大塚 範夫, 宗 和弘, 天野 徹夫, 尾嶋 正弘, 中沢 靖彦, 山田 芳昭
    1988 年 54 巻 5 号 p. 629-632
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1983年以来ハウス栽培のキュウリうどんこ病防除にトリアジメホン剤を使用してきたところ,本薬剤に対するうどんこ病菌の感受性低下が認められた。本病に対する数種のEBI剤の防除効果を調べた結果,トリァジメホン剤で防除効果の低下が認められた。EBI剤4薬剤に対する本病菌の感受性値を測定した結果,対照として用いた感受性株S-1, S-2のEC50値は,0.001~0.184ppmの範囲を示したが,効力低下が認められたハウスから採集したN-1菌株では感受性値の低下が認められた。さらに, N-1菌株にトリアジメホン剤を6ヵ月間, 10回にわたって散布して得たN-2菌株では, S-2菌株に比べ,トリアジメホンでは318倍,トリフルミゾールでは67倍,ビテルタノールでは9倍,フェナリモールでは108倍の感受性低下が認められた。
  • 畔上 耕児, 田部井 英夫, 福田 徳治
    1988 年 54 巻 5 号 p. 633-636
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Pseudomonas plantarii菌液を開花中のイネもみに噴霧接種し, 15日後にもみを収穫して連続切片を作成し,本菌の存在部位を顕微鏡観察した。本菌は,おもに維管束に近い部分の内外頴下表皮直下の柔組織細胞間隙中に観察された。とくに,頴の鈎合部付近の外頴下表皮直下に多かった。また,鈎合部の空間および玄米上にも見られた。維管束に近い部分の下表皮には多数の気孔が存在しているが,しばしばこの気孔およびその直下にのみ本菌が存在していた。上表皮の気孔とその直下に発達している柔組織の細胞間隙中にも観察された。しかし,表皮下繊維組織中には観察されなかった。本菌は,下表皮および上表皮の気孔から頴内の柔組織中に侵入して増殖し,これが苗立枯れの主たる感染源になるものと考えられる。
  • 田部井 英夫, 畔上 耕児, 福田 徳治
    1988 年 54 巻 5 号 p. 637-639
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    The causal bacterium entered lemmata and paleae through stomata, and multiplied in the intercellular space of the parenchyma. Stomata are mainly open on the inner surface of lemmata and paleae, few on outer surface of lemmata, and they are connected each other through the intercellular space of parenchyma. This infection site does not seem specific phenomenon with regard as in case of Erwinia herbicola. The bacterial grain rot caused by Pseudomonas glumae and the bacterial seedling blight caused by P. plantarii followed this infection pattern to the rice grain. It is suggested that the seed-borne bacterial disease of rice generally follow this course of life cycle. Browning occurred only on the inner surface and the parenchyma of the palea affected with E. herbicola, and is suspected to be one of the defensive reaction of the palea against E. herbicola.
  • 國武 幸子, 松山 宣明, 脇本 哲
    1988 年 54 巻 5 号 p. 640-642
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Pseudomonas属植物病原細菌のなかには, Pyricularia oryzae(イネいもち病菌)に対して抗菌性を示すものがあり,とくにPseudomonas avenae(イネ褐条病菌)は平板培地上において顕著な抗菌活性を示した。本菌は各種Pyricularia属菌のほか,その程度はやや弱いもののFusarium oxysporum f.sp. melonisAtternaria bataticolaに対しても抗菌性を示した。Pseudomonas avenaeの生成する抗いもち病菌物質は, PS培地中で振とう培養することにより多量に生産された。本物質は透析されず, 100C, 10分間の熱処理およびprotease K処理により容易に失活することから,タンパク性の物質と考えられる。本抗菌物質の精製については現在検討中である。
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