日本植物病理学会報
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灰色かび病菌(Botrytis cinerea)のジカルボキシイミド系薬剤耐性菌株培養ろ液による薬剤耐性誘導
阿久津 克己入野 達之久保 明奥山 哲日比 忠明
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1988 年 54 巻 5 号 p. 593-599

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抄録

灰色かび病菌のジカルボキシイミド系,ベンズイミダゾール系両薬剤に対する耐性菌株(IHES-1~3とCAES-1~7)をMS液体培地で振とう培養した後,その培養ろ液で,感性菌株(IPCR-1)の分生胞子を振とう培養した。培養24時間毎に培養菌体を採取してベノミル,イプロジオン,プロシミドン,ビンクロゾリンの各含有培地で培養し,耐性獲得の有無を検定した。その結果,これらの菌体はジカルボキシイミド系薬剤含有培地で生育し,耐性獲得が認められたが,ベノミル耐性獲得は認められなかった。この方法によって得た13種の耐性菌株は,菌そう形状から3タイプに分けられた。これらの菌株の諸性質は継代培養によって変化が認められなかった。次に両系薬剤耐性菌株(CAES-4)の培養ろ液を熱処理(100 C, 30分間)後, MS培地に透析し,その透析外液中でIPCR-1を振とう培養したところ,同様にジカルボキシイミド系薬剤に対する耐性菌が得られた。その菌そう形状は, CAES-4培養ろ液培養で得た菌株と同様であった。このことからジカルボキシイミド耐性菌株の培養ろ液中に,低分子で耐熱性の薬剤耐性誘導因子が存在することが示唆された。

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