日本植物病理学会報
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日本で分離されたradish enation mosaic virusの理化学的性状と遺伝子産物
高橋 英樹
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1989 年 55 巻 2 号 p. 161-169

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抄録

Radish enation mosaic virus (RMV)はcomovirusグループに属するが,このグループのウイルスの理化学的性状についての研究は,これまでタイプウイルスであるcowpea mosaic virus (CpMV)について行われてきた。そのためRMVなど他のウイルスの性状についての報告は少ない。そこで本研究では,RMVの核酸,外被タンパク質,遺伝子構成などについて解析を試みた。その結果,RMVは3種類の粒子を含み(T, MおよびB成分),MとB成分は分子量47kと18kダルトンの2種類の外被タンパク質からできていた。また,MとB成分はそれぞれ分子量2.0×106と1.6×106ダルトンの1本鎖RNAを含んでいたが,T成分はRNAを含んでいなかった。さらにこれらのRNAはpoly (A)配列を含んでいた。次に,これらウイルスRNAを,Zn2+を加えてプロテアーゼ活性を阻害した状態でin vitro translation,を行ったところ,B-RNAからは分子量200kダルトンのポリペプチドが合成されたのに対して,M-RNAからは分子量115kと105kダルトンの2種類のポリペプチドが合成された。さらに,これらのin vitro翻訳産物をZn2+を加えずにインキュベートしたところ,翻訳産物が切断され新たなポリペプチドを生じた。これらの結果より,RMVは,M-RNAおよびM-RNAのin vitro翻訳産物の分子量がCpMVのものと異なる以外は,理化学的性状や遺伝子発現様式がCpMVに類似していることが明らかになった。

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