日本植物病理学会報
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モノクローナル抗体を用いたトマト系タバコモザイクウイルス(TMV)の抗原特性
高橋 義行亀谷 満朗匠原 監一郎
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1989 年 55 巻 2 号 p. 179-186

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抄録

TMVのトマト系弱毒株(L11A)で免疫したマウスから常法によりハイブリドーマを作製し抗体産生細胞株を得た。このハイブリドーマの11株の培養上清および腹水を採集して,TMVのL11A,トマト系強毒株(L, CH2),普通系(OM),トウガラシ系(P),ワサビ系(W),キュウリ緑斑モザイクウイルス-キュウリ系(Cu)およびスイカ系(Wa)に対する反応特異性を2種類の間接ELISA,競合法EHSA,リングテスト,および寒天ゲル内二重拡散法を用いて解析した。この結果,11株中5株の抗体はトマト系(L11A, L, CH2)とのみ反応したが,L11Aとのみ反応する抗体は得られなかった。他の6株の抗体はトマト系の他に各ウイルス系統(OM, P, W, Cu等)とも反応した。このうちの1種(8C8)はCH2に対して反応が弱く,トマト系の中で抗原性に違いがある可能性が示唆された。また,この抗体はトマト系よりもPに対して強く反応するheterospecific抗体であった。また,L11Aとそのコート蛋白に対する反応特異性から11種のうち10種はウイルス粒子の4次構造を認識する抗体であり,他の1種(6F11)は粒子の表面に現れているコート蛋白質に存在するエピトープに対する抗体であった。以上の反応特異性の解析からトマト系には,少なくとも8個のエピトープが確認された。このなかにはウサギ抗血清ともっとも強く反応するエピトープが含まれていた。また,これらの抗体は力価1:2,560を示しウサギ抗血清と同等に使用でき,TMVのトマト系の検出のみならず他のtobamovirusの系統(OM, P, W, Cu)の検出も可能であった。

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