抄録
ダイコンべと病菌(Peronospora parasitica Pers.: Fr.)の室内増殖,維持にダイコン(Raphanus sativus Linn. var. hortensis)幼苗の子葉と本葉を用いる方法を検討した。子葉はべと病菌に対して抵抗性であるので,抵抗性を弱めるために温湯浸漬による熱処理または根部の切断処理を行った。圃場でポット栽培した3品種(阿波1号,皿冠,大丸聖護院)の発育齢の異なる子葉を50Cで60∼120秒間熱処理後本菌を接種したところ,大丸聖護院の播種11日後の子葉の60秒間処理区で分生子柄および分生子形成率が最大値を示した。播種3週間後の幼苗本葉では,皿冠の30秒間処理で最大であった。人工気象器でポット栽培した幼苗の根部を切断して子葉に分生子を接種したところ,供試した3品種のうち白首宮重で分生子柄の形成率が最も高く,大丸聖護院,平安時無の順であった。発育齢との関係では白首宮重の場合は,播種5日後の子葉で,大丸聖護院では播種4日後の子葉でそれぞれ安定した分生子柄の形成が認められた。接種6日後の子葉を暗処理すると,分生子柄の形成促進と同調化の効果がみられた。接種3日後の子葉をペトリ皿湿室に入れ,低温(5C)暗黒下に2週間保った後,20C,暗黒下に戻すと分生子柄が多数形成された。この方法は本菌継代維持上,移植間隔を延長するのにきわめて有効である。