抄録
純化したインゲンマメ南部モザイクウイルスは,凍結乾燥処理によって病原性が11%に低下した。そのような標品のウイルス粒子は部分的に膨潤し,RNaseとsodium dodecyl sulfateに顕著な感受性を示した。しかし,凍結乾燥前にリジンを添加した標品では,これらの影響が抑制された。一方,無添加とリジン添加の凍結乾燥標品から抽出されたRNAの間に差のないことから,凍結乾燥処理による病原性の低下の原因はウイルス粒子の構造の変化によると考えられた。65Cに保存した凍結乾燥標品は1日で病原性が消失し,ウイルス粒子が膨潤した。そのような粒子内のRNAは完全に崩壊していた。一方,リジンを添加した場合,ウイルス粒子および粒子内のRNAは比較的よく保持され,無添加の標品に比べて病原性も高く維持された。このような傾向はカーネーション斑紋ウイルスでも認められた。