抄録
ジャガイモそうか病罹病塊茎およびテンサイそうか病罹病塊根から分離され,ジャガイモ塊茎にそうか病斑を形成するStreptomyces属菌について分類学的研究を行った。供試菌株は形態的特徴から,胞子鎖の形態がらせん状の菌株(SI)群と直∼波状の菌株(RFI)群に大別され,培養的性質もやや異なっていた。しかし,各種生理的性質を調べたところ,大部分の項目で供試菌株は一致しており明瞭な違いは認められなかった。そこで,各菌株からDNAを抽出してDNA-DNA交雑を行い菌株間のDNA相同値を比較した結果,ジャガイモから分離されたSI, RFIおよびテンサイから分離されたSI, RFIの各菌株間におけるDNA相同値は12∼14%ときわめて低いことから,これらの菌株は互いに別種であると考えられた。以上の結果はジャガイモそうか病の病原菌として遺伝的類縁関係の異なる少なくとも4種のStreptomyces属菌が存在することを明確に示すものである。