日本植物病理学会報
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水田から分離したイネ赤色菌核病菌菌株の類縁関係と水田における年次消長
稲垣 公治
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1990 年 56 巻 4 号 p. 443-448

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抄録
イネの単一株内から分離した赤色菌核病菌の多くの菌株は,培養的性質が著しく類似していた。これらの菌株間の菌糸融合の様式は完全融合であり,したがってイネの単一株に感染している赤色菌核病菌は1種類の融合群(2菌株間の菌糸融合が完全融合である菌株のグループ)が占有していることが判明した。赤色菌核病は水田(面積6∼9a)内で比較的広く発生していたにもかかわらず,融合群数は1∼6種類と少なかった。また,同一の融合群が同じ水田において3∼6年間残存しているのが確認された。水田内において広く分布している融合群が後年まで残存して,赤色菌核病をひき起こす場合の多いことが推察された。以上のように,水田内における菌核病の発生と病原菌との相互関係を把握するのに,融合群の調査が有効である。
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