ダイズ組織には疫病菌(
Phytophthora megasperma f. sp.
glycinea)の不溶性細胞壁から可溶性のエリシターを遊離する活性が存在し,部分的に純化されたエリシター遊離因子にはβ-1,3-endoglucanase活性が存在することが示されている。本研究においては,ダイズ子葉組織よりβ-1,3-endoglucanaseを高度に精製し,この精製した酵素に対するウサギ抗血清を用い,エリシター遊離因子とβ-1,3-endoglucanaseの同一性について解析を行った。精製したβ-1,3-endoglucanaseには,疫病菌細胞壁からエリシターを遊離する活性が認められた。純化酵素に対する抗血清は精製酵素のβ-1,3-glucanase活性およびエリシター遊離活性をほぼ完全に阻害するとともに,ダイズ組織の磨砕液による両活性をも顕著に阻害した。さらに,切断ダイズ子葉組織によるβ-1,3-glucanase活性およびエリシター遊離活性も本抗血清により阻害された。しかし,本抗血清によって阻害されないβ-1,3-glucanaseをもつ他の数種植物のエリシター遊離活性は,本抗血清によって阻害されなかった。また,細菌の一種(
Arthrobacter luteus)より調製されたβ-1,3-endoglucanase標品であるzymolyase 100Tもエリシター遊離活性を有していた。以上の結果は,エリシター遊離活性がβ-1,3-endoglucanase活性によるものであり,ダイズ組織に存在するβ-1,3-endoglucanaseが本組織中のエリシター遊離活性を担うものであることを示唆する。
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