1990 年 56 巻 5 号 p. 628-636
タバコ赤星病を引き起こすタバコ赤星病菌(Alternaria alternata tobacco pathotype)は,培養液および胞子発芽液中に宿主特異的毒素(AT毒素と命名)を生成した。本毒素は各種クロマトグラフィーを用いて純化された。純化毒素は感受性および中程度抵抗性タバコ品種葉にそれぞれ1および20μg/mlで壊死を誘起し,0.2μg/mlで両品種の発芽種子の根の伸長を抑制した。本毒素は,宿主葉プロトプラストに対し選択的に作用し,また,葉組織の酸素消費速度の増大を誘起した。本菌の宿主であるNicotiana属植物はいずれも毒素感受性であり,胞子発芽液中に毒素生成が認められた菌株のみが赤星病を引き起こした。さらに,タバコ葉に非病原菌株の胞子を微量の毒素溶液とともに接種するとこの菌株も感染するようになった。以上の結果より,AT毒素はNicotiana属植物に対する赤星病菌の病原性決定因子であると考えた。