1990 年 56 巻 5 号 p. 637-644
タバコ赤星病菌の生成する宿主特異的毒素(AT毒素)によって引き起こされた宿主細胞内の変性を,電子顕微鏡および画像解析装置を用いて検討した。毒素による変性像は毒素処理後24時間目から観察され,感受性細胞のミトコンドリアは膨潤し,基質は漏出した。毒素処理後48および72時間では,ミトコンドリアのクリステ容積が減少し,基質の空洞化が認められた。さらに,毒素処理細胞内のミトコンドリア中の顆粒は消失し,ミトコンドリア外膜の突出がみられ突出部の膜は薄くなった。これらの変性は毒素処理時間が経過するにしたがって顕著となった。一方,他の細胞内小器官にはまったく変性がみられなかった。以上の結果から,宿主細胞ミトコンドリアがAT毒素の初期作用をうける標的小器官であると考えられた。