日本植物病理学会報
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ニホンナシ黒星病菌分生子によるえき花芽りん片への感染機構
梅本 清作
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1991 年 57 巻 2 号 p. 188-195

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抄録

ニホンナシ黒星病菌のりん片への感染機構を検討した。長十郎のえき花芽の内側と外側半芽当りのりん片上の分生子数は,えき花芽の採取時期,枝に対する着生位置にかかわらず差は認められなかった。幸水および長十郎では長果枝の下部または左側部に位置するえき花芽の発病率が高く,さらに豊水を加えた3品種とも芽の内側の発病率が高かった。自然降雨を遮断した長十郎のえき花芽に分生子の接種を行っても発病がまったく認められなかったが,自然降雨下で接種を行った場合には多発した。走査電子顕微鏡観察により,りん片上の分生子は,露出りん片生組織部分で高率に発芽し,侵入していることが明らかになった。また,芽の種類別露出りん片生組織部分数は,豊水,幸水および長十郎のえき花芽において多く,また,保有率は顕著に高かった。これらの結果と発病実態とはよく一致した。また,すでに秋雨時に枝を流下する雨水中には多数の分生子が含まれていることが明らかにされている。以上の結果から,黒星病菌のりん片への感染機構は,秋雨時に枝を流下する雨水中に含まれている分生子の中で,露出りん片生組織部分に付着したものが,かなり長時間の水湿の存在下で発芽,侵入し感染が成立するものと考えられた。

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