日本植物病理学会報
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イネもみ枯細菌病の圃場における分布様式と発病株からの伝染
對馬 誠也内藤 秀樹
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1991 年 57 巻 2 号 p. 180-187

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抄録

自然発病条件下の3圃場(A圃場:中発生;B, C圃場:少発生)において,イネもみ枯細菌病の発生経過を森下のIB指数を用い調査した。発病度2以上の発病株の分布について検討した結果,出穂期1週間後ではA圃場のみが集中分布を示したが,出穂期2週間後では3圃場とも同様のIB曲線を描き,小集団をもつ集中分布を示した。出穂期3週間後では,B, C圃場で小集団をもつ集中分布を示したが,A圃場では病勢が著しく拡大し,大集団をもつ集中分布を示した。発病株が集中した箇所の中心部には重症穂(発病籾率30%以上)をもつ株が観察され,重症穂が周辺株の発病に関与していることが示唆された。そこで,圃場試験により出穂期および出穂期1週間後に発病度の異なるイネ株を設置し,出穂期3週間後に設置株周辺イネ株の発病を調べた。その結果,設置した発病株に近い株ほど発病度が高くなり,設置した発病株が周辺株の発病を引き起こしていることが明らかとなった。また設置株が同一発病度の区では早い時期に設置した区ほど,また設置時期が同一の区では発病度の高い株を設置した区ほど周辺株の発病度が顕著に高かった。自然発生圃場から,発病程度の異なる穂を採取し,発病穂の洗浄液からS-PG培地を用い経時的に病原細菌を検出した結果,発病籾率が高い穂ほど病原細菌量が顕著に多かった。この結果は,発病籾率の高い穂ほど伝染源として果たす役割が大きいことを裏づけるものと考えられた。

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