日本植物病理学会報
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ムギ類赤かび病菌のムギ類栽培圃場土壌からの分離
小泉 信三駒田 旦加藤 肇吉野 嶺一一戸 正勝林 長生
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1991 年 57 巻 2 号 p. 263-267

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抄録
日本におけるムギ類赤かび病菌の土壌中での生存を確かめた。ムギ類の出穂前(4月)に全国16ヵ所の農業試験場のムギ類栽培圃場から土壌試料の送付を受け,これらの試料を1mmメッシュの節を通し,植物片と土壌に分けた。これらから駒田培地によりFusarium菌を分離するとともに分離菌のコムギ穂に対する病原性を調べた。16ヵ所のうち千葉・群馬・愛知・岡山・山口・徳島・香川・佐賀県の8ヵ所の土壌からFusarium roseum ‘Graminearum’が分離され,これらはいずれもコムギ穂に赤かび病症状を生じた。F. roseum ‘Avenaceum’が山口県の土壌,F. nivaleが広島県の土壌中の植物片からそれぞれ分離され,これら分離菌はいずれもコムギ穂に赤かび病症状を呈した。広島・香川・福岡・宮崎県からはF. roseum ‘Acuminatum’が分離され,これらのうち広島県の土壌および土壌中の植物片,香川県の土壌中の植物片から分離した菌株にコムギ穂での病原性を認めた。以上の結果から,ムギ類赤かび病菌はムギ類栽培圃場の土壌中で生存することが実証された。
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