日本植物病理学会報
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Erwinia chrysanthemi菌株の抗原決定基
Carlos Hidemi UESUGI津野 和宣脇本 哲
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1991 年 57 巻 3 号 p. 377-386

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抄録

病原性の異なるErwinia chrysanthemiの3系統,すなわち,Ku8601(ナシからの分離菌),R8(イネからの分離菌)および511-3(トウモロコシからの分離菌)を用いて抗血清を作製し,これらの抗血清に対する反応によって各種の宿主植物から分離されたE. chrysanthemiの血清グループを比較した。その結果,供試した系統は4種類の血清グループに分類された。イネおよびトウモロコシを除く各種の植物からの分離菌は抗-Ku8601血清のみと反応し,これらを血清グループIとした。イネおよびトウモロコシから分離した菌株はそれぞれ抗-R8血清および抗-511-3血清とのみ反応して病原性との間に密接な関連性を示し,血清グループIIおよびIIIとした。またキクおよびマングビーンから分離した系統はいずれの抗血清とも反応しなかった。これら各菌株の膜蛋白をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分析し,ニトロセルロースシーツ法により抗原蛋白を検出した。抗-Ku8601血清と反応する菌株はすべて38.5と5.9kdの抗原蛋白を所有し,抗-R8血清と反応するものは,41.7と11.2kdの抗原蛋白をもち,また抗-511-3血清と反応するものは41.7, 40.3, 21.4と10.2kdの抗原蛋白をもっていた。これらの結果から,E. chrysanthemiの抗原決定基は主に菌体の膜蛋白に存在し,これらの蛋白のあるものは宿主に対する親和性の決定に重要な役割を担っている可能性が推察された。

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