日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
ニホンナシ“幸水”果実の黒星病に対する感受性の推移
梅本 清作
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 58 巻 1 号 p. 8-15

詳細
抄録

ニホンナシ“幸水”果実の黒星病に対する感受性と潜伏期間の推移について,接種試験で検討した。果実の黒星病に対する感受性の程度を幼果期には病斑面積率,それ以降は果実当たりの病斑数で判定したところ,開花前から5月上旬の幼果期には高く,5月中旬頃(開花約25日後)から急激に低下した。6月中旬(開花約55日後)から再び徐々に高まり,肥大後期では通常7月上旬または中旬に最も感受性が高まった。また,潜伏期間は果実の黒星病に対する感受性が高いと判定される時期においては14∼21日と短く,低いと判定される時期では約1ヵ月を要した。一方,果実の裂果率は接種時期によって異なり,5月上旬∼下旬接種で最も高く,ついで6月中旬で,その他の時期は低かった。このうち,5月中旬∼6月上旬までの果実の感受性は低いことから,栽培上は5月上旬と6月中∼下旬頃の感染による裂果が問題視される。以上の結果から,千葉県の“幸水”果実において黒星病に対する防除が特に重要となる時期は5月上旬までの幼果期および6月中旬∼7月中旬(開花約55∼90日後)であることを明らかにした。なお,この結果を関東地方においては直接適用できるが,西南暖地ではここに示した暦日より早く,東北地方では遅くなるように修正する必要がある。

著者関連情報
© 日本植物病理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top