抄録
トマトの根から分離したFusarium oxysporum MT0062は,トマト萎ちょう病に対する発病抑制作用が認められ,主要作物に対しては病原性を示さなかった。本菌は新たに確立した廃糖蜜,砂糖および無機塩からなる液体培地によりBud cellを容易に産生し工業的大量培養が可能となった。F. oxysporum MT0062のBud cellをゼオライトに吸着させ,育苗中のトマトの土壌表面に処理し,0∼28日後にトマト萎ちょう病菌汚染土壌に定植したところ,定植7∼14日前に処理した場合に抑制効果が最大となった。トマト苗の根から分離されるF. oxysporumの頻度は土壌表面処理後7∼14日後に最大となり,その後は徐々に減少したが,この傾向は発病抑制作用の強弱と一致した。さらに,温室内試験において病原菌汚染土壌に定植する10日前および定植時の2回処理を行うことによって,トマト萎ちょう病のほかナス半身萎ちょう病に対する防除効果が増高し,本菌の生物防除への利用の可能性が示された。