日本植物病理学会報
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58 巻, 2 号
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  • 植草 秀敏, 石井 誠, 寺岡 徹, 細川 大二郎, 渡辺 實
    1992 年 58 巻 2 号 p. 181-187
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    タバコモザイクウイルス(TMV)はキュウリ子葉でsubliminal symptomless infectionにより局在化し,感染部位はstarch-lesionとして認められるが,本実験ではキュウリに全身感染する3種類のウイルス(キュウリ緑斑モザイクウイルス,キュウリモザイクウイルス,ズッキーニ黄斑モザイクウイルス)との重複感染がこのTMVの局在化におよぼす影響について検討した。TMVを1次接種しCGMMVを2次接種した場合,starch-lesionの数および直径,ならびにTMV量およびCGMMV量には変化がなかった。CGMMVを1次接種し,TMVを2次接種した場合はstarch-lesion数とTMV量が減少したが,starch-lesionの直径には変化がなかった。TMVとCMVの重複感染の場合はTMVとCGMMVの場合とほぼ同様の結果であった。ZYMVを1次接種しTMVを2次接種した場合,TMV量は約7倍に増加した。これらの両ウイルスを混合接種した場合もTMV量は約4倍に増加した。しかし,TMVを1次接種し,ZYMVを2次接種した場合にはTMV量に変化はみられなかった。さらにZYMVとCGMMVを重複感染させた場合にはCGMMVの量には変化がみられなかった。また,ZYMVとTMVの重複感染によりTMV量が増加した場合,TMVのキュウリ子葉組織内における分布は対照に比べ水平,垂直両方向へ広範囲に拡がっていた。しかし,この場合でも,TMVが全身感染することはなかった。
  • 山口 健一, 佐野 孝夫, 有田 政信, 高橋 正昌
    1992 年 58 巻 2 号 p. 188-194
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    トマトの根から分離したFusarium oxysporum MT0062は,トマト萎ちょう病に対する発病抑制作用が認められ,主要作物に対しては病原性を示さなかった。本菌は新たに確立した廃糖蜜,砂糖および無機塩からなる液体培地によりBud cellを容易に産生し工業的大量培養が可能となった。F. oxysporum MT0062のBud cellをゼオライトに吸着させ,育苗中のトマトの土壌表面に処理し,0∼28日後にトマト萎ちょう病菌汚染土壌に定植したところ,定植7∼14日前に処理した場合に抑制効果が最大となった。トマト苗の根から分離されるF. oxysporumの頻度は土壌表面処理後7∼14日後に最大となり,その後は徐々に減少したが,この傾向は発病抑制作用の強弱と一致した。さらに,温室内試験において病原菌汚染土壌に定植する10日前および定植時の2回処理を行うことによって,トマト萎ちょう病のほかナス半身萎ちょう病に対する防除効果が増高し,本菌の生物防除への利用の可能性が示された。
  • 家城 洋之, 澤田 宏之
    1992 年 58 巻 2 号 p. 195-199
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ブドウの根頭がんしゅ病に対する抵抗性を判定するための接種方法,抵抗性程度を分類するための判定基準および主要60品種の抵抗性程度の類別を行った。根頭がんしゅ病抵抗性程度を判定するための接種条件は,苗木の生育しつつある新梢先端部2∼3節間部の茎にAgrobacterium tumefaciens biovar 3の菌濃度約2×108cfu/mlを注射器(ディスポーザブルトッププラスチックシリンジ,針の直径0.45mm)で数ヵ所単針付傷接種を行う。これを23°Cに約30日間置いた後,がんしゅの直径(2r)を測定して,r2π値を算出する。その際,基準品種として選抜した抵抗性が強のデラウェア,中のローズ・ショーター,弱の巨峰にも同時に接種を行う。抵抗性判定基準は,基準品種の巨峰に形成されたがんしゅのr2π値の指数を100とした場合,各品種の指数が0∼20のものは抵抗性が強,21∼60は中,61以上は弱と判定する。この判定基準によって,ブドウ60品種の抵抗性を分類すると,強に属する11品種,中の30品種および弱の19品種の3グループに分けられた。その中で最もり病性であったのは甲州三尺であった。
  • 野村 和成, 川崎 信二
    1992 年 58 巻 2 号 p. 200-207
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    いもち病菌は培地にイネプロトプラストの破壊を誘導する成分を分泌する。FADの取り込み能を有する細胞を計測し,プロトプラスト生存率を低下させる程度を活性の指標にして培養濾液の活性成分の性質を検討した。培養濾液を希釈すると,活性は希釈率の対数に比例して直線的に低下した。致死活性の主要な成分は60°C以上,30分の熱処理,あるいは10mM NaOH, 24時間の処理により失活し,エタノール,アセトン,10% TCA,硫安の50-75%飽和溶液で沈澱することからタンパク質性の物質と考えられた。TCA沈澱成分で4時間処理すると,プロトプラストの84%が破壊された。この活性因子はイオン交換ゲル(DEAE-Toyopearl)に吸着され,約0.1MのNaClで他のタンパク質とともに溶出された。10%TCA沈澱部はゲル濾過により4つのピークに分けられ,約30kDaのタンパク質のピークに致死活性の大部分が認められた。粗培養濾液はイネと同様に,コムギ,ライムギのプロトプラストに対しても破壊活性を示したが,オオムギや双子葉植物(ダイズ,キャベツ,カーネーション)に対する活性は低かった。イネプロトプラストに対しては非親和性菌との組合せで生存率が低い傾向が認められた。
  • 岡崎 博, 斉藤 道彦, 鶴田 理
    1992 年 58 巻 2 号 p. 208-213
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    熊本県西合志町周辺および宮崎県都城市周辺の畑圃場における土壌中のAspergillus flavusおよびA. parasiticusの生息密度,アフラトキシン生産性および両菌の生息に与える栽培作物,温度,土壌水分の影響を調べた。熊本地域では12圃場を調査して,ダイズ,メロンの2圃場からA. flavusを検出した。両圃場のA. flavus数は土壌1gあたりそれぞれ166および33であった。都城地域ではトウモロコシ,ピーナッツ,サツマイモ畑のそれぞれ15圃場を調査し,トウモロコシ3圃場,ピーナッツ2圃場,サツマイモ1圃場からA. flavusを検出した。これらの圃場の土壌1gあたりのA. flavus数は33から100の範囲にあった。ついで,熊本地域の9圃場および都城地域の12圃場の土壌について,水分補充区と不補充区に分けて,それぞれ25, 30および37°Cで1ヵ月間培養した。一部の土壌間ではA. flavus数に有意差が認められたが,培養の前後および温度間,水分間ではA. flavus数に有意差は認められなかった。しかし,同一土壌を7回繰り返して測定した結果,1回目の測定ではA. flavusが検出されなかった13圃場のうち7圃場からA. flavusが検出され,生息密度は低いが広く分布していることが示唆された。繰り返し測定の結果から両地域の畑土壌1gあたりの平均A. flavus数は熊本地域では30±9.7,都城地域では11±2.3であった。分離株のアフラトキシン生産性は,熊本地域では6圃場から分離した12株のうち1株がアフラトキシンB1およびB22を生産した。都城地域では8圃場から分離した16株のうち1株がアフラトキシンB1, B2を生産し,3株がB1, B2, G1およびG2を生産した。本試験ではA. parasiticusは検出されなかった。
  • 有本 裕, 本間 保男
    1992 年 58 巻 2 号 p. 214-219
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    うどんこ病菌,Sphaerotheca fuligineaの生育と宿主のクロロフィルとの関係について観察した。実験にはキュウリ(品種:相模半白)の自然突然変異で生じた黄色突然変異キュウリおよび本葉に白斑の入る斑入りキュウリを用いた。黄色突然変異キュウリはクロロフィルを持たない。また斑入りキュウリの白斑部細胞もクロロフィルを持たない。正常キュウリ葉上では菌糸長は接種48時間後平均1209μmになった。また,それぞれの分生胞子から形成される吸器数は接種96時間後には平均63個であった。新たな分生子柄は接種4日後に形成された。一方,斑入りキュウリ葉の白斑上でもS. fuligineaの生育は続いたが,48時間後の菌糸長は平均173μmで,また96時間後の吸器数は平均5個であり,分生子柄の形成は接種14日後に初めて観察された。黄色突然変異子葉上では接種48時間後の菌糸長が平均74μmであり,第2吸器の形成も起らず,その生育は停止した。しかし,根を2%しょ糖溶液に浸せきすると黄色突然変異子葉上でのS. fuligineaの生育は正常キュウリでのそれと同程度まで回復した。したがって,外部から糖などを与えればS. fuligineaの生育に宿主細胞中のクロロフィルは必ずしも必須ではないことが明らかとなった。
  • 伊達 寛敬, 尾崎 克己, 白川 隆, 那須 英夫, 畑本 求, 岡本 康博
    1992 年 58 巻 2 号 p. 220-227
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1989年8∼9月,岡山県下のハウス抑制栽培の圃場でカボチャ台接ぎ木キュウリに,本邦未記載の細菌病が発生した。本病は穂木が萎ちょうし,台木の茎部の表面および維管束が黄変して根部は褐変腐敗し,激しくなると発病株はやがて枯死する。また,罹病植物の黄変した台木茎部を検鏡すると,多量の細菌が主に維管束部位から漏出する。
    分離細菌は均質な細菌学的性質を有し,対照のP. solanacearumの性質と一致した。分離細菌はカボチャ,カボチャ台接ぎ木キュウリおよびトマトに強い病原性を示したが,キュウリには病原性を示さなかった。したがって,分離細菌をPseudomonas solanacearum (Smith 1896) Smith 1914と同定し,病名はカボチャ青枯病とすることを提案する。
  • Siti Muslimah WIDYASTUTI, 野中 福次, 渡辺 敬介, 佐古 宣道, 田中 欽二
    1992 年 58 巻 2 号 p. 228-233
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    カナメモチの葉に病原菌であるビワごま色斑点病菌の胞子を接種すると,2種類のファイトアレキシンが生成された。このファイトアレキシンはいずれもbiphenyl化合物で,2'-methoxyaucuparinと4'-methoxyaucuparinと同定された。両物質はエリシターとして10-4M HgCl2を噴霧した葉でも誘導生成された。ビワごま色斑点病菌の胞子を接種して4日目における2'-methoxyaucuparinと4'-methoxyaucuparinの生成量は,それぞれ3.578μg/gと1.233μg/g(生重葉)であり,無接種葉のそれぞれに対して358倍および88倍量であった。両ファイトアレキシンの病原菌に対する発芽阻害活性をカナメモチのペスタロチア病菌と灰色かび病菌について比較した結果,4'-methoxyaucuparinの方が2'-methoxyaucuparinより優っていた。
  • 電顕計測学的研究
    朴 杓允, 大野 藤吾, 西村 正暘, 尾谷 浩, 甲元 啓介
    1992 年 58 巻 2 号 p. 234-243
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    これはAK毒素処理したニホンナシ葉組織の電顕計測学的観察に関する最初の報告である。毒素処理した感受性細胞の反応と生死について調べた結果,感受性細胞では核・葉緑体・液胞・糸粒体・マイクロボディの細胞内占有率に関して,毒素処理区と対照区の間で有意差は認められなかった。一方,感受性細胞におけるゴルジ体領域と粗面小胞体の細胞内占有率・核小体の核内占有率・クリステの糸粒体内占有率・貪食ゴルジ小胞数は,毒素処理6時間後までは対照区よりも毒素処理区で有意に高かった。毒素処理10時間後,これらの細胞内小器官の占有率や数は,壊死細胞を含む感受性ナシ葉組織で激減した。抵抗性細胞では細胞内小器官の占有率や数の有意な増減は認められなかった。得られた電顕計測の結果から,毒素が処理6時間後までは感受性細胞の合成系の細胞代謝やゴルジ分泌活性を一時的に増進させ,その後,これらの代謝活性を徐々に減少させて,遂には細胞死に至らせることが示唆された。
  • 澤田 宏之, 家城 洋之, 小林 省藏, 生山 巖
    1992 年 58 巻 2 号 p. 244-252
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    根頭がんしゅ病菌(Agrobacterium tumefaciensおよびA. rubi)のTiプラスミドに基づく系統分化を明らかにするために,来歴の異なる21菌株をブドウ,モモ,ナシ,トマト,ヒマワリ,ベンケイソウ,タバコの茎,ならびにベンケイソウの葉に接種した。形成されたがんしゅの長径を変数として主成分分析を行ったところ,これらは7つのグループ(グループ1∼7)に大きく類別できた。グループ1(オパインとしてオクトピンとククモピンを誘導),2(ビトピン誘導)および3(オパイン未検出)にはbiovar 3のみが含まれており,いずれもブドウに対して強い病原性を示したが,その他の植物ではがんしゅの大きさに差異が認められた。グループ4(オクトピン,アグロピンおよびマンノピン誘導)はbiovar 1のみを含んでいるが,グループ5(ノパリン誘導)にはbiovar 1, 2, A. rubiおよび所属不明菌が混在しており,分類学的にはヘテロな集団であった。これら2つのグループはブドウには弱病原性であるものの,それ以外の植物には強い病原性を示した。分類学的な所属が不明な菌株から構成されているグループ6(オパイン未検出)およびグループ7(ノパリン誘導)は全般的に病原性が弱かった。形成されたがんしゅの形状,がんしゅ中に誘導されるオパインの種類およびアグロシン84感受性についても,グループ5以外ではグループごとに均一なパターンが得られた。グループ5はアグロシン84感受性が陽性のグループ5-A (biovar 1, 2および所属不明菌)と陰性の5-B (A. rubi)に細分された。グループ5-A以外の供試菌株はすべてアグロシン84に対して抵抗性であった。グループ2に属する日本産の6菌株のbiovar 3は,いずれもオパインとしてビトピンを誘導することから,わが国にもビトピン型が分布していることが明らかとなった。
  • 那須 英夫, 畑本 求
    1992 年 58 巻 2 号 p. 253-258
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    モモいぼ皮病の病徴として,いぼ病斑と樹脂漏出のほかに皮目周囲の陥没斑が岡山県において確認され,北米で報告されたモモのgummosisの病徴と一致した。本病は,1年生枝では徒長枝に最も激しく発病し,次いで徒長枝より基部がやや細い褐色の枝で発病が多く,赤紫色の細枝ではほとんど発病していなかった。徒長枝では基部に最も発病が多かった。若い枝では皮目やそれ以外の部位にいぼ病斑が,約3年生以上の枝では皮目に陥没斑といぼ病斑が生じ,また,多雨期に,2年生以上の罹病枝で樹脂漏出がみられた。分生子の時期別接種により,発病程度,発病部位および潜伏期間の差異などを調査した結果,発病が最も多かったのは6月接種区,次いで5, 7月接種区であった。接種区の枝に形成された病斑は自然発病の場合と同様であった。発病開始期は,4∼7月接種区ではいずれも8月下旬頃,8∼9月接種区では10∼11月,10月接種区では翌年2月頃であった。その後,病斑数の増加が秋期と翌年の春∼初夏に認められた。接種期間中の分生子数と病斑数または降水量とには正の相関が認められた。
  • 石黒 潔, 武地 誠一, 橋本 晃
    1992 年 58 巻 2 号 p. 259-266
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    圃場のイネ葉上における殺菌剤トリシクラゾールの動態と葉いもちの防除効果についてのモデルを構築するために,薬剤散布後における各葉位別の葉剤付着量の推移および薬剤付着量と発病予防効果との関係を調査した。また,これらで得られたデータの有効性を確かめるために,本薬剤を散布した圃場における葉いもちの病勢進展を調査した。圃場において二種の時期にトリシクラゾール300g a.i/haを1500l/haの水で希釈してイネに散布したところ,各葉位における葉剤付着量の推移はいずれも減衰曲線モデルに適合した。薬剤散布時に完全展開していた各葉位における薬剤初期付着量の椎定値は生葉1g当り4.39∼19.69μgであり,半減期の推定値は2.46∼5.33日であった。また,薬剤散布時に一部展開していた葉およびまったく展開していなかった葉からは完全展開時にそれぞれ2.57および0.56μg/gの薬剤が検出された。これらの圃場においてはトリシクラゾール散布後約2週間にわたって葉いもちに対して高い予防効果が認められ,散布後新たに展開した葉においても防除効果が認められた。ポット試験によると,トリシクラゾールは0.34μg/gで高い予防効果を発揮するが,0.20μg/gでは効果が判然とせず,中央有効濃度(EC50)は0.24μg/gと推定された。この試験で得られたトリシクラゾール剤の動態および作用特性に関する量的知見により,本薬剤を散布した圃場における葉いもちの病勢進展をおおよそ適切に説明できた。
  • 加藤 雅康, 佐藤 章夫, Ahmed A. MOSA, 小林 喜六, 生越 明
    1992 年 58 巻 2 号 p. 267-275
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1987年から1989年に日本各地のジャガイモから分離したPhytophthora infestans 300菌株以上を用いて培養性質を調べた。菌株は2グループ(Sタイプ,Mタイプ)に類別された。Sタイプ菌はジャガイモの塊茎スライス上で薄く平らな菌叢を形成し,遊走子のうの形成量が多かった。一方,Mタイプ菌は綿毛状の菌叢を形成し,遊走子のうの形成量が少なかった。分離直後の菌株をV-8ジュース寒天培地で培養したところ,Sタイプ菌は菌糸生育が良好であったが,Mタイプ菌は不良であった。塊茎スライス上の菌叢やV-8ジュース寒天培地上での両タイプの生育は,継代培養や保存後にしばしば変化した。ライムギ寒天培地上では両タイプとも常によく生育した。オートミール寒天培地上ではSタイプ菌は生育できなかったがMタイプ菌はよく生育し,この性質は安定であった。培養型S, Mタイプは,交配型A1, A2にそれぞれ一致した。
  • 田村 勝徳, 瀧川 雄一, 露無 慎二, 後藤 正夫, 渡辺 實
    1992 年 58 巻 2 号 p. 276-281
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    マオラン条斑細菌病菌(Xanthomonas campestris pv. phormiicola)はジャガイモ塊茎組織を肥大させる。本菌の液体培養ろ液から抽出・精製した生理活性物質は,マオラン,イタリアンライグラス,タバコの葉に明瞭な黄化を生じた。本毒素のTLCにおけるRf値および1H NMRスペクトルは,対照のコロナチンのそれとよく一致した。以上より本菌の産生する毒素はコロナチンと同定され,本菌がXanthomonas属では初めてのコロナチン産生菌であることが明らかになった。また本菌に罹病したマオラン葉からもコロナチンが検出された。なお,プラスミドDNAは検出されず,本菌のコロナチン産生におけるプラスミド支配の可能性は低いものと考えられた。
  • 森田 昭
    1992 年 58 巻 2 号 p. 282-285
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ビワの1年生健全苗木32本を1980年2月に定植し,全ビワ樹の新芽の1ヵ所にビワがんしゅ病菌を接種して防除試験を行った。防除薬剤としてボルドー液を用い,防除時期を全期間(9年)と前,後期にわけて行い,病斑の拡がりを調査して防除効果を比較した。
    接種9年後の病斑数は全期間無防除樹が最も多く,前期無防除・後期防除樹,前期防除・後期無防除樹,全期防除樹の順に減少した。前期無防除・後期防除樹には,前期に病斑が多数形成されて,菌の密度が高くなっており,後期に防除を行っても十分な効果がみられなかった。一方,前期防除を行って病斑数を少なく抑えておくと,後期無防除でも,病斑数の増加は少なかった。
    最終病斑形成部位は前期無防除・後期防除樹では,樹体の生育に強く影響する主幹,主枝であり,前期防除・後期無防除樹では生育にあまり影響のない側枝である場合が多くみられた。
    以上の結果より,本病の防除は植え付け初期から行う必要のあることが明らかとなった。
  • 陳 隆鐘, 宮坂 篤, 宮下 俊一郎, 江原 淑夫, 羽柴 輝良
    1992 年 58 巻 2 号 p. 286-291
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Rhizoctonia solani AG-4群の15菌株を供試して,エチジウムブロマイド-ビスベンズイミド密度勾配遠心法によってミトコンドリアDNA分画から検出したプラスミド様DNA (plDNA)は塩基数から2つのグループ,2.7kbと2.4kbに分けられた。本plDNAは,すでにAG-4群菌株から検出したプラスミド,pRS 64と高い相同性を示した。制限酵素地図の解析から,さらに,本plDNAは5つのタイプに類別された。2.4kbのplDNAを持つグループの中に1あるいは2種類のplDNAを持つ菌株が認められた。2.7kbのplDNAを持つグループの中には1, 2および3種類のplDNAを持つ菌株が存在した。
  • 本村 知樹, 田中 欽二, 佐古 宣道, 野中 福次
    1992 年 58 巻 2 号 p. 292-297
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ヒシ白絹病菌の自然菌核は水面に浮上するが,PSA培地上に形成された菌核は水に沈む。自然菌核は培養菌核よりも細胞数が少なく,細胞間の空隙は多く,薄い細胞壁からなっていた。PSA希釈培地およびヒシ葉寒天培地を用いて照明下で形成された菌核は水面浮上率が高く,内部構造的にも自然菌核に類似していた。これに対し,無照明下で培養した場合,いずれの培地上に形成された菌核も水面浮上率が低かった。ヒシ白絹病菌菌核の水面浮上性には栄養条件と光が大きく関与しているものと考えられた。
  • 奥田 誠一, 長谷川 睦己, 夏秋 知英, 梶 和彦, 夏秋 啓子, 寺中 理明
    1992 年 58 巻 2 号 p. 298-304
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    福島県で発生したインゲンマメつる枯病から分離したウイルス(NFU株)を,ソラマメで種子伝染していたインゲンマメ黄斑モザイクウイルス(BYMV-SB株)と比較した。NFU株はインゲンマメ,エンドウ,ソラマメで激しいえそ症状を示したが,BYMV-SB株はいずれにおいてもモザイク症状を示した。NFU株はモモアカアブラムシにより非永続的に伝搬されたが,種子伝染は認められなかった。感染葉からは,典型的なpotyvirusと考えられるウイルス粒子と封入体が電子顕微鏡で見いだされた。NFU株の純化試料をSDS-PAGEにかけたところ,分子量約34kと37kの2本のバンドが検出された。クローバ葉脈黄化ウイルス(CYVV)とBYMVに対する数種抗血清を用いた免疫電子顕微鏡法で,NFU株はBYMV抗血清よりCYVV抗血清と強く反応した。ELISA,寒天ゲル内拡散法,免疫電顕法,ウエスタンブロット法で,NFU株とBYMV-SB株は血清学的に近縁であるが,抗原的には明らかに異なっていた。これらの結果から,NFU株はCYVVの1系統と同定された。インゲンマメにえそ症状を引き起こすCYVVは,圃場周辺から採集したオオバコ,オオイヌノフグリ,カキドウシ,ホトケノザ,シソ,シロクローバ,アカクローバ,アヤメから見いだされ,伝染源として重要と考えられた。
  • 霜村 典宏, 朴 杓允, 尾谷 浩, 児玉 基一朗, 甲元 啓介
    1992 年 58 巻 2 号 p. 305-309
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    リンゴ斑点落葉病菌のAM毒素で処理された感受性リンゴ葉を処理直後から光照射下に静置すると,毒素による壊死斑形成は抑制されたが,原形質膜の陥入や葉緑体グラナラメラの小胞化は抑制されなかった.一方,SH基修飾剤処理葉では壊死斑形成と原形質膜の陥入が抑制されたが,葉緑体グラナラメラの小胞化はまったく抑制されなかった.以上の結果は,毒素による生理機能障害を指標とした既報の結果とよく一致し,AM毒素は葉緑体と原形質膜の2ヵ所に初期作用を示すが,毒素による壊死斑形成には毒素の細胞膜への作用が重要であること,細胞膜機能障害後,光によって阻害される過程を経て壊死に至ることが微細構造の観察からも確認された.
  • 松宮 江里, 鈴木 健, 上野 吉一, 水谷 純也
    1992 年 58 巻 2 号 p. 310-314
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    絶対寄生菌P. brassicaeを菌-宿主複合体として培養し,その第二次遊走子を安定して得るための条件を検討した。宿主アブラナ科植物の播種後2日目の植物体の根に,休眠胞子懸濁液を接種した後,その植物体を水耕培養液のpHを5.5付近に保って4日から6日間培養すると,根毛中に成熟遊走子嚢,空殻化遊走子嚢,一部の第二次遊走子が残された遊走子嚢および嚢外に放出された第二次遊走子が観察された。嚢外に第二次遊走子が放出されるか否かは,とくに培養液のpHに大きく依存した。また老化根こぶ組織から得た感染力の強い休眠胞子を接種源とし,感染宿主植物を雑菌の影響を小さくして好適な生育条件で培養したとき,第二次遊走子は再現性よく観察されることが明らかとなった。
  • 小渕 正次, 寺岡 徹, 細川 大二郎, 渡辺 實
    1992 年 58 巻 2 号 p. 315-318
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ジャガイモのジャガイモXウイルス(PVX)に対する抵抗性を接種葉とプロトプラストについて調べた.罹病性品種(男爵薯,農林1号)では接種葉におけるウイルス量は対数的に増加したが,免疫性品種(Saco,金時薯)ではウイルスの増殖は認められなかった.これらの品種の葉肉プロトプラストにPVX-RNAを接種した場合,罹病性品種のウイルス感染率は約50%で多量のウイルスが増殖したが,免疫性品種ではウイルスの増殖は認められなかった.しかし,タバコモザイクウイルスRNAを男爵薯およびSacoのプロトプラストに接種した場合,両品種とも同程度のウイルスの増殖が認められた.
  • 津田 新哉, 夏秋 啓子, 都丸 敬一
    1992 年 58 巻 2 号 p. 319-324
    発行日: 1992/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    トマト黄化えそウイルス(TSWV-M)を精製して抗血清を作製した。精製したTSWVと健全葉粗汁液とをそれぞれ結合させた2本のアフィニティーカラムに抗血清を通してクロマトグラフィーを行い,TSWV特異抗体を精製した。得られたTSWV特異抗体は,免疫電子顕微鏡法による観察で精製TSWVと最終希釈倍率256倍まで反応した。グルタールアルデヒドで固定したヒツジ赤血球にタンニン酸で本特異抗体を結合させ,受身赤血球凝集反応法を試みた。TSWV全身感染葉および健全タバコ葉を検定した結果,全身感染葉ではその粗汁液の32倍希釈までを凝集させたが,健全葉の粗汁液に対してはまったく反応しなかった。また,2科8種のTSWV感染植物を検定した結果,どの植物からもTSWVの検出が可能であった。
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