日本植物病理学会報
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感受性ニホンナシ葉組織においてAK毒素により引き起こされた細胞代謝の一時的活性化
電顕計測学的研究
朴 杓允大野 藤吾西村 正暘尾谷 浩甲元 啓介
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1992 年 58 巻 2 号 p. 234-243

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抄録
これはAK毒素処理したニホンナシ葉組織の電顕計測学的観察に関する最初の報告である。毒素処理した感受性細胞の反応と生死について調べた結果,感受性細胞では核・葉緑体・液胞・糸粒体・マイクロボディの細胞内占有率に関して,毒素処理区と対照区の間で有意差は認められなかった。一方,感受性細胞におけるゴルジ体領域と粗面小胞体の細胞内占有率・核小体の核内占有率・クリステの糸粒体内占有率・貪食ゴルジ小胞数は,毒素処理6時間後までは対照区よりも毒素処理区で有意に高かった。毒素処理10時間後,これらの細胞内小器官の占有率や数は,壊死細胞を含む感受性ナシ葉組織で激減した。抵抗性細胞では細胞内小器官の占有率や数の有意な増減は認められなかった。得られた電顕計測の結果から,毒素が処理6時間後までは感受性細胞の合成系の細胞代謝やゴルジ分泌活性を一時的に増進させ,その後,これらの代謝活性を徐々に減少させて,遂には細胞死に至らせることが示唆された。
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