日本植物病理学会報
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Bacillus subtilis NB22を用いたトマト根腐萎ちょう病および青枯病の生物防除
裴 在根正田 誠北 宜裕中野 光行牛山 欽司
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1992 年 58 巻 3 号 p. 329-339

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抄録
コンポストから分離したBacillus subtilis NB22 (NB22)の植物病原糸状菌および病原細菌に対する生育抑制効果についてin vitroの系で検証したところ,実験に供した19種の植物病原糸状菌および8種の植物病原細菌すべてに生育抑制作用を示した。NB22との対峙培養により生育が抑制されたトマト萎ちょう病菌(Fusarium oxysporum f.sp. radicis-lycopersici) (FoR)の菌糸の先端部を観察したところ,菌糸の変形,膨潤および破裂による細胞質の溶出などが認められた。次にNB22を圃場レベルでの生物防除に応用するために,トマト根腐萎ちょう病および青枯病に対する発病抑制効果について検討した。成苗を用いたトマト根腐萎ちょう病の防除試験においては,NB22の菌体を含む培養液を稲藁に浸漬させ,これをFoR自然汚染土壌の混和した場合に最も高い発病抑制効果が認められた。この稲藁浸漬処理に蒸気消毒(80°C, 1hr)処理を組み合わせたところ,発病抑制はさらに高まり,対照区に比べて3∼4倍の収量が得られた。なお,この処理を施した後,60日においてもNB22の濃度は2∼3×106cfu/1g乾土のレベルで安定して存在した。また,Pseudomonas solanacearumにより引き起こされるトマト青枯病の防除試験においても,NB22培養液,および菌体それぞれを定植時に青枯病菌の自然汚染土壌にかん注処理することにより,対照区においては24日後には90%の株が発病,枯死したが,NB22の培養液の処理区では処理24日後では10%の発病率しか示さなかった。以上の結果から,NB22は各種の植物病原菌に幅広い抗菌スペクトルを有すること,およびトマト根腐萎ちょう病ならびに青枯病の生物防除に応用できる可能性が示された。
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