日本植物病理学会報
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58 巻, 3 号
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  • 裴 在根, 正田 誠, 北 宜裕, 中野 光行, 牛山 欽司
    1992 年 58 巻 3 号 p. 329-339
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    コンポストから分離したBacillus subtilis NB22 (NB22)の植物病原糸状菌および病原細菌に対する生育抑制効果についてin vitroの系で検証したところ,実験に供した19種の植物病原糸状菌および8種の植物病原細菌すべてに生育抑制作用を示した。NB22との対峙培養により生育が抑制されたトマト萎ちょう病菌(Fusarium oxysporum f.sp. radicis-lycopersici) (FoR)の菌糸の先端部を観察したところ,菌糸の変形,膨潤および破裂による細胞質の溶出などが認められた。次にNB22を圃場レベルでの生物防除に応用するために,トマト根腐萎ちょう病および青枯病に対する発病抑制効果について検討した。成苗を用いたトマト根腐萎ちょう病の防除試験においては,NB22の菌体を含む培養液を稲藁に浸漬させ,これをFoR自然汚染土壌の混和した場合に最も高い発病抑制効果が認められた。この稲藁浸漬処理に蒸気消毒(80°C, 1hr)処理を組み合わせたところ,発病抑制はさらに高まり,対照区に比べて3∼4倍の収量が得られた。なお,この処理を施した後,60日においてもNB22の濃度は2∼3×106cfu/1g乾土のレベルで安定して存在した。また,Pseudomonas solanacearumにより引き起こされるトマト青枯病の防除試験においても,NB22培養液,および菌体それぞれを定植時に青枯病菌の自然汚染土壌にかん注処理することにより,対照区においては24日後には90%の株が発病,枯死したが,NB22の培養液の処理区では処理24日後では10%の発病率しか示さなかった。以上の結果から,NB22は各種の植物病原菌に幅広い抗菌スペクトルを有すること,およびトマト根腐萎ちょう病ならびに青枯病の生物防除に応用できる可能性が示された。
  • 稲垣 公治, 磯村 嘉宏
    1992 年 58 巻 3 号 p. 340-346
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1983年から1989年の5∼6年間に,イネが登熟期である水田から褐色菌核病菌を分離し,得られた分離菌株を菌糸融合の様式の調査によって類別した。その結果,2水田(約5∼6a)からの分離菌株の218, 245菌株は,それぞれ37, 50種類の系統(同一種類の系統内の菌株間ではいずれの組み合わせでも完全融合が認められるが,異なる種類の系統に属する菌株間では不完全融合が認められる)に分類できた。これら系統の水田における出現状況を6年間調べることによって,水田における系統の残存期間を調べた。その結果,残存期間が1年であるものが全系統の55%を占め,4∼6年に及ぶものが22%を占めた。水田内で広い範囲にわたって分布している系統は長期間残存していた。水田内で系統が4∼6年残存する場合,同一系統が毎年水田内の同じ地点や近隣の地点で確認されることはなかった。本調査水田内で毎年確認される系統数のうち約60%(この数値は年次や水田によって異なる)は,その水田に初めて確認されるものであった。また,1986年と1987年に約20m離れた2水田で,それぞれ9∼20種類の系統を確認したが,これらのうち3∼5種類が2水田に共通していた。
  • 番 保徳, 坂西 昌則, 池上 正人
    1992 年 58 巻 3 号 p. 347-353
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Bean golden mosaic virus (BGMV)が宿主インゲン(Phaseolus vulgaris)へ感染する際のタンパク質パターンの変化をポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて解析した。コマジーブルー染色による比較では1次元および2次元ゲル電気泳動の双方において感染葉,非感染葉間での変化が認められなかった。[35S]メチオニンを取り込ませてタンパク質パターンを比較するとウイルス感染に特異的なバンドが2つ検出された。一方はBGMVの外皮タンパク質であり,他方は宿主植物由来と推定される24kDaタンパク質であった。ウイルス感染の進行過程のなかで,ウイルス外皮タンパク質は感染後期で強く発現しており,一方24kDaタンパク質は感染初期で強く発現していた。この24kDaタンパク質はウイルスの感染成立に際し重要な役割を担うことが示唆された。
  • 植松 清次, 廣田 耕作, 白石 俊昌, 大泉 利勝, 赤山 喜一郎, 石倉 比呂志, 枝川 良実
    1992 年 58 巻 3 号 p. 354-359
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1986年に千葉県下のスイカ(ユウガオ台)とメロンの輪作圃場において,急性萎ちょう症状を示したスイカのユウガオ台木の褐変した根部からメロン黒点根腐病菌であるMonosporascus cannonballusが分離された。分離菌株の接種試験の結果,ユウガオ台スイカやメロンにも病原性を示した。また,本病は愛知,群馬県など各地でも発生がみられた。本病をユウガオ黒点根腐病とすることを提案する。
  • 渡辺 恒雄
    1992 年 58 巻 3 号 p. 360-365
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    南近畿地方の土壌に生息するPythium菌の種と分布を明らかにするため,キュウリ種子による捕捉法を用いて菌を分離し,調査した。供試した28試料中26試料から1試料当り1∼7種のPythium菌が分離または検出されたが,2試料からは全く分離できなかった。分離した合計253菌株は,H-Zs(糸状胞子嚢から遊走子を形成するが,生殖器官は未形成の一群)を含む18種に分類・同定できた。最も一般的に分布していたH-Zsは,20ヵ所から52菌株が分離された。次いで,P. sylvaticum, P. irregulare, P. ultimum, P. aphanidermatumの分布が広く,10∼15ヵ所から23∼30菌株が分離された。
  • 福本 文良, 栃原 比呂志
    1992 年 58 巻 3 号 p. 366-372
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Cucumovirusグループに属する3種のウイルスの凍結乾燥処理および保存後の病原性の変化,粒子の構造およびRNAと外被タンパク質の変化について比較を行った。キュウリモザイクウイルスではしょ糖密度勾配遠心によるウイルス画分が著しく小さくなった。また,キク微斑ウイルスとラッカセイわい化ウイルスでは,凍結乾燥処理によって膨潤する粒子が現れた。しかし,しょ糖,イノシトール等の添加物を凍結乾燥前に添加することによって,いずれのウイルス粒子も影響が認められなくなった。これらの標品を65°Cに保存した場合も,各種添加物の保護効果の程度と病原性の低下ならびにRNAの崩壊程度に相関が認められ,いずれのウイルスにも共通性がきわめて高かった。これらのことから,Cucumovirusグループに属する他のウイルスも共通の条件で保存が可能であることが示唆された。
  • 野村 良邦
    1992 年 58 巻 3 号 p. 373-379
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1977年に熊本県下のポリエチレンハウス栽培で,カボチャ台の接ぎ木スイカに急性萎ちょうが発生した。この発病株の接ぎ木ゆ合部組織からはFusarium属菌が分離され,本病原菌はユウガオつる割病菌(Fusarium oxysporum f. sp. lagenariae Matuo et Yamamoto)と同定された。本病原菌を各種ウリ科作物に接種して病原性を調べた結果,ユウガオ,ヒョウタンの他にクロダネカボチャ(Cucurbita ficifolia)および西洋カボチャ(C. maxima)に対しても病原性が認められた。しかし,日本カボチャ(C. moschata),ペポカボチャ(C. pepo)および種間雑種カボチャ(C. maxima×C. moschata)に対しては病原性が認められなかった。クロダネカボチャや西洋カボチャの症状は早期から子葉が黄化し,ついで本葉が下葉から黄化萎ちょうして生育が抑制され,やがて株全体が萎ちょうして枯死した。発病株は根張りが貧弱で根の表面が褐変し,さらに組織の維管束が褐変して病原菌が高率に再分離された。本病原菌によるカボチャの病害を「カボチャつる割病(Fusarium wilt of pumpkin)」と呼称することを提案した。
  • Samuel S. GNANAMANICKAM, Twng Wah MEW
    1992 年 58 巻 3 号 p. 380-385
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    いもち病は熱帯地方の畑栽培稲作の大きな障害である。本報告は,薬剤に代わる病害防除法として蛍光性Pseudomonas細菌の利用を示唆した。本細菌はいもち病菌分生胞子の発芽を抑制する。FeCl3を培地に加えても効力が減退しないので,抑制の機作はシデロフォア形成によるものではなく,抗いもち病菌性抗生物質の生産によるものと思われる。本細菌液へのイネ種子の浸漬および立毛苗への細菌の散布によって葉いもち病,穂首いもち病を軽減することができる。
  • 広田 直彦, 羽柴 輝良, 吉田 穂積, 菊本 敏雄, 江原 淑夫
    1992 年 58 巻 3 号 p. 386-392
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    F. oxysporum菌の61菌株を供試して10菌株,6分化型からプラスミド様DNA (plDNA)を検出した。本plDNAは線状であり,大きさは1.9∼8.0kbの範囲にあった。検出された1.9kbの各plDNA, f. sp. arctiiからのpFOA, f. sp. liniからのpFOL, f. sp. conglutinansからのpFOC, f. sp. raphaniからのpFOR間でサザン・ハイブリダイゼーションを行った結果,pFOA, pFOL, pFOC DNAは互いに相同性を示したが,pFOR DNAは示さなかった。また,f. sp. melongenaeからのpFOM (8.0kb)とf. sp. batatasからのpFOB (2.2kb) DNAは1.9kbの各plDNAと相同性を示さなかった。
  • 津田 新哉, 花田 薫, 日高 操, 美濃部 侑三, 亀谷 満朗, 都丸 敬一
    1992 年 58 巻 3 号 p. 393-404
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    トマト黄化えそウイルス(TSWV)のゲノムは変性条件下において3分節のRNAが確認されている。茨城県のピーマンからの分離株(TSWV-P)のヌクレオキャプシドを精製し1% SDSで処理した後アガロースゲル電気泳動を行った結果,6本のssRNAのバンド(ss1∼ss6)が観察された。一方,ヌクレオキャプシドからRNAをproteinase K, SDS-フェノールにより抽出すると少なくとも3本のdsRNA (ds1∼ds3)が認められたがグリオキザール処理により消失し3本のssRNAバンドのみが観察された。そこで,ssRNAをそれぞれ抽出しss1とss2, ss3とss4およびss5とss6をアニーリングさせた結果,ds1はss1とss2より,ds2はss3とss4より,ds3はss5とss6より構成されていることが判明した。また,グリオキザール処理後の各セグメントをプローブとしたノーザンハイブリダイゼーションにおいてもアニーリングのデータを裏付ける結果を得た。次に,ヌクレオプロテイン(Nタンパク)はS RNAにコードされている(de Haan et al., 1990)ので,トリプシン消化後のNタンパク断片のアミノ酸配列から推定される塩基配列と先のRNAシークエンスから相補的配列が同一成分上で存在しない部位の+鎖と-鎖,および3′末端からのダイレクトRNAシークエンシングによる15塩基の配列とその相補的配列の4種のオリゴヌクレオチドをプローブとしてハイブリダイゼーションをおこなったところすべてのプローブともds3に関連するバンドとのみ反応した。これらの結果から,TSWV-PのゲノムRNAは基本的には3分節であるが,その粒子中には相補的なRNA鎖が各成分に対してそれぞれ存在していることが示唆された。
  • 吉岡 博文, 白石 友紀, 那須 公雄, 山田 哲治, 一瀬 勇規, 奥 八郎
    1992 年 58 巻 3 号 p. 405-415
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    エンドウ褐紋病菌Mycosphaerella pinodesはその柄胞子発芽液中にエリシターおよびサプレッサーを分泌する。本報告では,抵抗反応の一つと考えられているキチナーゼおよびβ-1, 3-グルカナーゼの活性化に及ぼすエリシターとサプレッサーおよびP型ATPaseの阻害剤であるバナジン酸の影響を調べた。エンドウ,ダイズ,インゲンをエリシターで処理すると,両酵素の活性増高が誘導された。しかし,1mMバナジン酸の共存下では,いずれの植物においても活性の増高は抑制された。一方,サプレッサーは供試植物の中でエンドウに対してのみ抑制効果を示した。本結果は,原型質膜ATPaseの阻害とキチナーゼおよびβ-1, 3-グルカナーゼの抑制に強い関連のあることを示唆している。
  • Noemi P. OROLAZA, 川口 悦男, 柘植 尚志, 道家 紀志
    1992 年 58 巻 3 号 p. 411-415
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    トマト・アルターナリア茎枯病菌が生産する宿主特異的毒素(AL毒素)のトマト培養根に対する作用について検討した。アルターナリア茎枯病感受性トマト品種三重ファーストおよび抵抗性品種サターンから培養根を調製した。両品種の培養液を種々の濃度のAL毒素Iを添加した培地中で6日間培養し,培養根の新鮮重量を測定した結果,感受性品種では,0.01μg/ml以上の毒素によって根の生育異常が観察され,1μg/ml以上では生育が完全に阻害された。また,抵抗性品種でも,0.1μg/ml以上の毒素によって培養根生育が抑制された。次に,細胞の生存率検定法としてMTT比色定量法を用いて,培養根細胞の毒素反応性を調査した。その結果,感受性品種の培養根では,1μg/mlの毒素によって2日目から細胞生存率が減少し,10μg/mlの毒素添加培地中では,3日目以後生存率が約20%に低下した。また,細胞生存率の低下した培養根では,根全体の若干の褐変化や根先端部のえ死が観察された。一方,抵抗性品種の培養根では,10μg/mlの毒素添加培地中で5日間培養した場合にも細胞生存率の低下は認められなかった。以上の結果から,AL毒素は感受性品種だけでなく抵抗性品種の培養根に対しても顕著な生育阻害活性を示すが,培養根細胞に対するえ死毒性は宿主選択的であることが明らかとなった。
  • 越智 資泰, 柏崎 哲, 平塚 和之, 難波 成任, 土崎 常男
    1992 年 58 巻 3 号 p. 416-425
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Capillovirusグループのpotato virus T (PVT) RNAの3′末端の2,392塩基の配列を決定した。本配列は5′末端側より互いに末端の重複したORF 1(少なくとも248アミノ酸(29K)以上),ORF 2 (358アミノ酸;40K),およびORF 3 (213アミノ酸;24K)をコードし,3′末端には188塩基よりなる非翻訳領域とpoly (A)が認められた。29Kタンパク質は,alpha-like supergroupのうち,ポリメラーゼグループIIに属する数種植物RNAウイルス(beet yellows virus (BYV; closterovirus subgroup B), tobacco mosaic virus, tricornavirus)のポリメラーゼタンパク質のC-末端に特有のアミノ酸配列よりも,ポリメラーゼグループIに属するウイルス(apple chlorotic leaf spot virus (ACLSV; closterovirus subgroup A), carlavirus, potexvirus)のそれに類似していた。24Kタンパク質は,ひも状ウイルス(ACLSV, BYV, citrus tristeza virus (CTV; closterovirus subgroup C), potexvirus, carlavirus)の外被タンパク質と共通のアミノ酸配列ブロックを有していた。40Kタンパク質は,植物ウイルスのcell-to-cell movementタンパク質と推定される配列と類似していた。またPVTは,ACLSVと3′末端側においてORFの配置が酷似しており,poly (A)のないBYVとはまったく異なっていた。Capillovirusグループの遺伝子構造に関しては,本報告が最初である。以上から,現在closterovirus subgroup Aに分類されているACLSVは,遺伝子構造上むしろPVTに類似し,subgroup BおよびCのウイルスとは異なることが明らかになり,ACLSVはむしろPVTと同一グループを形成すると考えられることから,その分類については再検討の必要があろう。
  • 牛山 欽司, 北 宜裕, 陶山 一雄, 青野 信男, 小川 潤子, 藤井 溥
    1992 年 58 巻 3 号 p. 426-430
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    わが国特有のキウイフルーツかいよう病の伝染源を解明するため,宿主に近縁のマタタビ属植物に注目し,病原細菌の分離を試みた。全国で採集された被害葉90点のうち,サルナシおよびミヤママタタビの6点から,キウイフルーツかいよう病細菌と同一の血清学的性質を示す細菌を得た。このうち22菌株は発病程度に差異があるものの,供試マタタビ属植物に病原性を示した。本病原はキウイフルーツが導入されていない北海道からも検出されたので,元来わが国に分布していたものがキウイフルーツに伝播したと推察される。
  • 朴 杓允, 李 星淑, 大野 藤吾, 柘植 尚志, 西村 正賜
    1992 年 58 巻 3 号 p. 431-445
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    AF毒素Iを処理した感受性イチゴ葉細胞で生じた原形質変性は,AK毒素Iにより引起こされた感受性ニホンナシ葉細胞での原形質膜変性と類似していたが,以下のいくつかの点で異なる構造変化を示すことがわかった。1)原形質連絡糸部位に出現する原形質膜陥入は小規模である。2)陥入部に貯溜する多糖類成分と膜片は少量である。3)細胞質に出現するゴルジ小胞の数は対照区よりも多いが,AK毒素Iによる原形質膜変性部位で見られたものほど多くはない。4)原形質膜の陥入の出現頻度は低い。これらの構造変化の相違は,AF毒素Iの作用機序がAK毒素と同じでなく,若干異なることを示す。一方,アンチモン酸カリウム固定法と分析電顕を用いて,AF毒素Iを処理したイチゴ葉細胞におけるイオン漏出部位を調べた結果,原形質連絡糸近辺の原形質膜から細胞内のMgとNaイオンが漏れていることが明らかとなった。同様の結果は,AK毒素Iを処理した感受性ニホンナシ葉でもすでに知られており,微少型原形質膜変性や激烈型原形質膜変性と膜透過性の失調との間に密接な関係があることが示唆された。
  • 佐藤 守, 酒井 富久美
    1992 年 58 巻 3 号 p. 446-451
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    組換え微生物の野外利用の安全性に関する基礎研究として,RSF1010とその誘導プラスミド(今回構築したpNIA1, pNIA2)とその宿主細菌P. syringaeの土壌中および培地中での消長を調査した。プラスミド含有菌株と含有しない野生株との間に,殺菌土壌,非殺菌土壌中の生存率に差異はなかった。また,土壌中あるいは培地中のプラスミドの安定性は,それぞれ土壌条件,温度条件,プラスミドタイプによって,あるいは培養諸条件(温度,培地の種類,振とうの有無等)によって強く影響された。とくに低温(5°C)処理は,殺菌土壌と液体静置培養におけるプラスミド脱落に有効であった。
  • 森田 泰彰, 有江 力, 河原林 主一, 陶山 一雄, 難波 成任, 山下 修一, 土崎 常男
    1992 年 58 巻 3 号 p. 452-455
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1988年5月,沖縄県中城村の鉢植えおよび苗床のファレノプシスおよびドリテノプシスで,根および地際部の腐敗,葉の萎ちょう,株枯れを起こす未記載の病害が見いだされた。病株の褐変部より分離された糸状菌は,PDA培地上で白色の菌叢を形成し,長い分生子柄上に楕円形の小型分生子を擬頭状に,菌糸上とスポロドキア上に弓形の大型分生子を形成した。厚膜胞子は頂生あるいは間生であった。また,寒天培地上で容易に赤色の子のう殼を形成し,その内部に2胞の子のう胞子8個を含む子のうを多数形成した。これらの性状より,本菌はNectria haematococca Berk. et Br. [Fusarium solani (Mart.) Sacc.]と同定された。また,本菌の接種により,ファレノプシスおよびドリテノプシスに病徴が再現された。病名をそれぞれファレノプシスおよびドリテノプシスの株枯病(Nectria blight)とした。
  • 石栗 秀, 内野 浩克, 神沢 克一
    1992 年 58 巻 3 号 p. 456-460
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    テンサイ貯蔵腐敗病を拮抗微生物を用いて防除するために,土壌および貯蔵中のテンサイ根から主たる病原菌であるBotrytis cinereaおよびPenicillium expansumに拮抗作用を示す細菌を3, 114株分離した。寒天平板並びにテンサイ根を用いて,これらの病原菌の生育を最も強く抑えた1株(D-202)を選択した。本菌株による貯蔵腐敗病の低下は,テンサイ個体を用いた実験により確認された。本菌株について細菌学的な検討を行ったところ,Pseudomonas cepaciaと同定された。
  • 子のう胞子飛散量による発生予察と要防除水準の策定
    上田 進, 芳澤 宅實
    1992 年 58 巻 3 号 p. 461-463
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Total number of the trapped ascospores of Gibberella zeae in middle April was correlated with the degree of scab damage in wheat and barley in Ehime Prefecture from 1960 to 1990 (r=0.769, P<0.01). Field trials of fungicide application to the disease showed that the degree of scab damage was highly correlated with the degree of yield loss of the crops (r=0.977, P<0.01). Based on these results, the degree of yield loss, the degree of scab damage and the total number of the trapped ascospores corresponding to the economic injury level were estimated to be 5.77%. 2.65% and 18.52 spores, respectively.
  • 奥田 誠一, 王 蔚芹, 夏秋 知英, 寺中 理明
    1992 年 58 巻 3 号 p. 464-468
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    A new disease of tomato with yellow mosaic symptoms was found in Japan in 1983. A strain of alfalfa mosaic virus (AMV-T), proved to be the causal agent of the disease, was characterized comparing with another isolate of AMV from red clover (AMV-R). The two isolates varied in symptomatology in tomato, pea and petunia. Neither of the isolates affected soybean which is susceptible to many strains of AMV. AMV-T and AMV-R were slightly different from each other in polyacrylamide gel electrophoresis of double-stranded RNAs extracted from Nicotiana glutinosa plants infected with the two isolates, indicating that they had distinct electrophero-types. In agar gel diffusion using anti-AMV-T serum, a spur was formed, which was not formed in a test using anti-AMV-R serum, indicating that these two isolates were serologically related but antigenically different.
  • 古谷 眞二, 倉田 宗良
    1992 年 58 巻 3 号 p. 469-472
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1988年10月,高知県の露地ショウガ(Zingiber officinale Rosc.)の根茎に黒あざ症が発生した。病斑は地表に露出した根茎に認められ,褐色で,大きさ10∼20mm程度の円形∼長楕円形であった。古くなるとこの上に1mm前後で黒色なめし皮状の菌核様構造物を生じ,翌春にはこの菌核様構造物に分生子を形成した。病斑部からはPyricularia属菌が分離され,その単胞子分離株の接種により病斑の形成が再現され,接種菌が再分離された。分離菌の形態ならびにショウガおよびミョウガ(Z. mioga Rosc.)葉に対する接種試験から,黒あざ症の原因菌はPyricularia zingiberi Nishikadoであると結論された。本症状の発生は、収量や品質の向上のための新品種や灌水技術の導入などと関係があると推定された。また,ショウガ畑周辺の自家用や野生化したミョウガに発生しているいもち病菌が伝染源の一つであると考えられた。
  • 横山 克至, 井尻 勉, 藤田 靖久, 羽柴 輝良
    1992 年 58 巻 3 号 p. 473-475
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    A new method (HUMIDAS) for estimating relative humidity from data of AMeDAS (Automated Meteorological Data Aquisition System) was developed by multiple regression analysis. In this method, relative humidity (Y) for a 3-hr period is expressed as follows: Y=AX1+BX2+CX3+DX4+EX5+F. X1=temperature, X2=precipitation, X3=wind velocity, X4=shining hour and X5=range of temperature. The A-E values are regression coefficients and F is a constant. The relative humidity actually observed agreed well with the estimated values.
  • 牛山 欽司, 陶山 一雄, 北 宜裕, 青野 信男, 藤井 溥
    1992 年 58 巻 3 号 p. 476-479
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    A new bacterial disease causing brown spot with yellow halo on the tara vine (Actinidia arguta) was found in 1988 in Kanagawa Prefecture. Two kinds of bacterium were isolated from these leaves. Bacterium isolated at high frequency produced brown spot with yellow halo on the leaves of A. arguta and canker symptoms on the kiwifruit. These symptoms were similar to naturally infected A. arguta and kiwifruit canker disease described by Serizawa et al. The second bacterium was not isolated so often and produced only brown spot without halo on the leaves of A. arguta. These bacteria were identified as Pseudomonas syringae pv. actinidiae and P.s. pv. syringae respectively on the basis of the bacteriological characteristics, and the reaction with a monoclonal antibody against P.s. pv. actinidiae and it's pathogenicity. This is first report that P.s. pv. actinidiae was isolated from wild grown A. arguta.
  • 鈴木 善彦, 藤 晋一, 高橋 義行, 小島 誠
    1992 年 58 巻 3 号 p. 480-484
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    抗イネ縞葉枯ウイルス(RSV)血清とプロテインAゴールドを用いて,保毒ヒメトビウンカ各器官におけるRSV抗原の分布と細胞内存在部位を電顕観察した。その結果,中腸,唾腺,卵巣,脂肪体におのおの標識部位が観察された。標識は各器官の細胞質中の限られた不定形ないし繊維状構造の上に観察された。標識部位には周囲の細胞質とは異なり,リボゾームや小胞体が見られず,また,特定の限界膜は観察されなかった。
  • 細川 大二郎, 渡辺 實
    1992 年 58 巻 3 号 p. 485-490
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    タバコモザイクウイルス(TMV)に感染したタバコのモザイク葉の黄緑色部はTMVの増殖が定常期状態にあるので,これにジャガイモXウイルス(PVX),ジャガイモYウイルス(PVY)およびキュウリモザイクウイルス(CMV)を重複接種し,これらのウイルスの増殖と細胞内の分布を電顕により調べた。PVXの接種では,PVX粒子がTMV粒子の集塊の近傍の細胞質に多数集積し,PVXの封入体も観察された。しかしTMV粒子の配列が大きく変化することは少なかった。PVYの接種ではPVYの封入体がTMV粒子の近傍に多数観察され,この部位の近くではTMV粒子がangle-layerの配列をした。CMVの接種ではCMV様粒子が細胞質に多数集積し,また液胞内にはCMV粒子が単独あるいはTMV粒子と混在して結晶状の集塊を形成した。以上の結果からTMVの増殖が定常期状態にある細胞においても,他種ウイルスの増殖が可能であると考えられた。
  • 亀谷 満朗, 栃原 比呂志, 花田 薫, 鳥越 博明
    1992 年 58 巻 3 号 p. 491-494
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Attenuated isolates of watermelon mosaic virus 2 (WMV-2) were obtained by local lesion selection on Chenopodium quinoa after the treatments of partially purified materials of WMV-2 (W-80) with ultraviolet irradiation and nitrous acid. Squash, cucumber, muskmelon and watermelon seedlings inoculated with one of the isolates designated WI-9 remained symptomless, except mild symptoms on first true leaf, and showed protection to the later inoculation with virulent isolate of WMV-2 in greenhouse conditions.
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