日本植物病理学会報
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イネ褐色菌核病菌系統の水田における残存期間と近隣水田での分布
稲垣 公治磯村 嘉宏
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1992 年 58 巻 3 号 p. 340-346

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抄録
1983年から1989年の5∼6年間に,イネが登熟期である水田から褐色菌核病菌を分離し,得られた分離菌株を菌糸融合の様式の調査によって類別した。その結果,2水田(約5∼6a)からの分離菌株の218, 245菌株は,それぞれ37, 50種類の系統(同一種類の系統内の菌株間ではいずれの組み合わせでも完全融合が認められるが,異なる種類の系統に属する菌株間では不完全融合が認められる)に分類できた。これら系統の水田における出現状況を6年間調べることによって,水田における系統の残存期間を調べた。その結果,残存期間が1年であるものが全系統の55%を占め,4∼6年に及ぶものが22%を占めた。水田内で広い範囲にわたって分布している系統は長期間残存していた。水田内で系統が4∼6年残存する場合,同一系統が毎年水田内の同じ地点や近隣の地点で確認されることはなかった。本調査水田内で毎年確認される系統数のうち約60%(この数値は年次や水田によって異なる)は,その水田に初めて確認されるものであった。また,1986年と1987年に約20m離れた2水田で,それぞれ9∼20種類の系統を確認したが,これらのうち3∼5種類が2水田に共通していた。
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