抄録
タバコモザイクウイルス(TMV)に感染したタバコのモザイク葉の黄緑色部はTMVの増殖が定常期状態にあるので,これにジャガイモXウイルス(PVX),ジャガイモYウイルス(PVY)およびキュウリモザイクウイルス(CMV)を重複接種し,これらのウイルスの増殖と細胞内の分布を電顕により調べた。PVXの接種では,PVX粒子がTMV粒子の集塊の近傍の細胞質に多数集積し,PVXの封入体も観察された。しかしTMV粒子の配列が大きく変化することは少なかった。PVYの接種ではPVYの封入体がTMV粒子の近傍に多数観察され,この部位の近くではTMV粒子がangle-layerの配列をした。CMVの接種ではCMV様粒子が細胞質に多数集積し,また液胞内にはCMV粒子が単独あるいはTMV粒子と混在して結晶状の集塊を形成した。以上の結果からTMVの増殖が定常期状態にある細胞においても,他種ウイルスの増殖が可能であると考えられた。