日本植物病理学会報
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タバコモザイクウイルスの増殖が定常期状態にあるタバコ細胞における他種ウイルスの増殖の電子顕微鏡観察
細川 大二郎渡辺 實
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1992 年 58 巻 3 号 p. 485-490

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抄録
タバコモザイクウイルス(TMV)に感染したタバコのモザイク葉の黄緑色部はTMVの増殖が定常期状態にあるので,これにジャガイモXウイルス(PVX),ジャガイモYウイルス(PVY)およびキュウリモザイクウイルス(CMV)を重複接種し,これらのウイルスの増殖と細胞内の分布を電顕により調べた。PVXの接種では,PVX粒子がTMV粒子の集塊の近傍の細胞質に多数集積し,PVXの封入体も観察された。しかしTMV粒子の配列が大きく変化することは少なかった。PVYの接種ではPVYの封入体がTMV粒子の近傍に多数観察され,この部位の近くではTMV粒子がangle-layerの配列をした。CMVの接種ではCMV様粒子が細胞質に多数集積し,また液胞内にはCMV粒子が単独あるいはTMV粒子と混在して結晶状の集塊を形成した。以上の結果からTMVの増殖が定常期状態にある細胞においても,他種ウイルスの増殖が可能であると考えられた。
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