抄録
トマトかいよう病細菌Clavibacter michiganensis subsp. michiganensisの萎ちょう毒素に耐性のトマトカルス細胞を選抜し,かいよう病抵抗性個体を作出することを目的とし,まず,トマト植物体及びカルス培養細胞に対する病原細菌の病原性と毒素の生物活性を比較検討した。カルス培養細胞と細菌との混合培養において,感受性品種由来のカルス細胞の死滅率が抵抗性品種由来のカルス細胞より明らかに高かった。また,病原細菌培養ろ液から30∼40%飽和硫安塩析で抽出した粗毒素をカルス懸濁培養に添加した場合も同様な反応が認められた。これらの結果は,接種試験で植物体が示した各品種の抵抗性程度とほぼ同様であった。熱無処理と熱処理(120°C, 5分間)した粗毒素をトマト切り苗に吸収させた結果,抵抗性,感受性品種とも同様に苗の蒸散率を20∼30%に減少させて,萎ちょう症状を誘起したが,熱処理毒素の活性は若干低かった。この結果から,本毒素活性に多糖質のような耐熱性成分に加えてタンパク質のような熱不安定な成分が関与する可能性が示唆される。