日本植物病理学会報
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かいよう病及びCTV抵抗性のカンキツ周縁キメラについて
合成周縁キメラ‘FN-1’と‘NF-3’の果実組織のキメラ性と品種構成
大津 善弘久原 重松
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1994 年 60 巻 1 号 p. 20-26

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抄録

病害抵抗性を賦与する目的で作出した‘福原オレンジ’(F)と‘川野なつだいだい’(N)の人為的周縁キメラ植物‘NF-1’と‘NF-3’の組織構成を簡易に同定する試みを行い,以下の結果を得た。‘NF-1’と‘NF-3’の果実組織のキメラ性および品種構成を明らかにするために,組織別のフラバノン配糖体4成分を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)で分析した。‘NF-1’では,砂じょう(茎頂起原層第1層)はNのそれと非常に類似したクロマトグラムを示した。表皮細胞層(第I層)および太い維管束(第III層)を除いた内果皮(第IIおよびIII層),じょうのう膜(第IIおよびIII層),種子(第II層)と太い維管束(第III層)はFのそれらのクロマトグラムとそれぞれ良く類似した。‘NF-3’では,砂じょう(第I層)はFのそれと良く類似したクロマトグラムを示し,内果皮およびじょうのう膜(共にIIとIII),種子(II)と太い維管束(III)はNのそれらのクロマトグラムとそれぞれ良く類似した。以上の結果から,‘NF-1’は果実の起原層I-II-IIIがN-F-Fであり,‘NF3’はI-II-IIIがF-N-Nである,それぞれ周縁キメラであることが明らかになった。‘NF-1’の学名にCitrus sinensis+natsudaidaiを,‘NF-3’のそれにC. natsudaidai+sinensisを提案する。また,‘NF-1’の新しい品種名として‘FN-1’を提案する。果皮および果肉の母品種のフラバノン配糖体4成分の割合構成はキメラの果皮および果肉においても良く似たそれらの割合構成を発現していた。このことから,第IIおよびIII層に病害抵抗性品種の組織を,第I層に高品質品種の組織を導入すれば,作出したキメラの果実においても,病害抵抗性および高品質が良く発揮されるものと思われる。

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