日本植物病理学会報
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イネ苗腐敗病(Pseudomonas glumae)および発芽種子上の細菌相互作用に対するベノミルの効果
後藤 正夫高垣 真喜一小寺 敦瀧川 雄一露無 慎二
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1994 年 60 巻 1 号 p. 74-81

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抄録
P. glumaeは菌株により500∼1,000μg/mlのベノミルを含むジャガイモ・ブドウ糖寒天培地で増殖したが,1,500μg/ml以上では完全に成育が抑制された。P. glumaeに対するベノミルの成育抑制は静菌作用によるものであった。P. glumaeの培養にはベノミル耐性菌が種々の頻度で混在し,それらは何れも強い病原性を示した。イネ苗腐敗病の発生はベノミル剤の種子粉衣によって効果的に抑制されたが,表面消毒した種子ではこの効果はみられなかった。ベノミル剤粉衣種子では,P. glumaeの増殖抑制が起こる一方,腐生細菌,特にfluorescent pseudomonadsの顕著な増殖がみられた。非処理対照種子ではこれとは全く逆の菌数変化がみられた。これらのfluorescent pseudomonadsは培地上で,P. glumaeに抗菌活性を示すものが多く,イネ苗腐敗病の発生を効果的に抑制した。この細菌はその主な細菌学的性質からPseudomonas fluorescensと同定され,液体培地中で抗菌物質の生成が確認された。この結果,P. glumaeによるイネ苗腐敗病に対するベノミル剤の効果は,主として薬剤処理により選択的に増殖するP. fluorescensの抗菌活性によるものと考えられた。
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