日本植物病理学会報
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病害抵抗性導入のためのカンキツ合成周縁キメラ‘NF-5’の効率的作出
大津 善弘
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1994 年 60 巻 1 号 p. 82-88

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抄録
病害抵抗性を効率的に付与する方法を開発するために,CTVに抵抗性の‘川野なつだいだい’(N)を起原層第IIおよびIII層に組入れる方向性をも持たせた設計で,周縁キメラの効率的作出を試みた。Nと‘福原オレンジ’(F)の実生を寄せ接ぎし,胚軸の各接合部を横に切断した後,Nの胚軸を茎の方向に対して60度の角度をつけてさらに切断した。その胚軸の切断面を植物ホルモンの配合液で処理し,パラフィルムを被せた後,明るい実験室内で育てた。両品種の境界に近いN上の切断面に生じた不定芽一個を選び温室で育てた。50μMジベレリンA3, 1μM 6-ベンジルアデニンおよび1μM α-ナフタレン酢酸の配合液を処理した区からキメラが極めて効率的に得られた。このキメラの構成品種は,筆者の開発した簡易法による分析結果から第IIおよびIII層がNから成り,第I層はFから成ると推定された。本研究により,カンキツの起原層第IIおよびIII層にかいよう病およびCTVに抵抗性の組織を簡易に導入する手法が確立されたが,本作出法を以後DHS法と呼称したい。また,このカンキツ合成周縁キメラの学名としてCitrus natsudaidai+sinensisを,品種名として‘NF-5’を提案する。
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