抄録
タバコモザイクウイルスラッキョウ系(TMV-R)の3′末端から2,000塩基の配列を決定した。この配列には30Kタンパク質(687-1493),外被タンパク質(205-684)遺伝子及び3′非翻訳領域(1-204)が含まれていた。このTMVの塩基配列を既知の6種類のtobamovirusと比較するとTMV-普通系(-OM, -vulgare)と高い相同性が認められた。TMV-Rと-OMの外被タンパク質のアミノ酸配列を比較すると158アミノ酸残基中に8個所で置換があり,そのうち3個所はN末端近くに,3個所はC末端近くに見いだされた。両系統の30Kタンパク質のアミノ酸配列の相同性は95.5%であり,全268アミノ酸残基中に12個所で置換があり,これらの置換はC末端領域に集中して見いだされた。TMV-Rはブライトエロー(BY)に全身感染できないことはすでに報告したが,本系統はBYのプロトプラストでは高い感染・増殖能を示した。以上の結果からTMV-Rの30Kタンパク質内で変換されていたアミノ酸がBYにおける,30Kタンパク質の機能の欠損を引き起こしていると思われた。