抄録
1990年から1992年に,北海道および関東地方を中心とした日本のコムギ栽培地域よりコムギ赤さび病罹病菌98菌株を分離し,Chesterの判別品種と付加的判別品種を用いてレース判別を行った。その結果,関東以西の地域では農林16号とアオバコムギにのみ病原性を有するレース1Bが広く分布するが,北海道では比較的多くの判別品種に対して病原性を有する様々なレースが分布することが明らかになった。この結果は過去60年間に日本において報告されたものとほぼ一致したが,レース8や73のように従来,報告のなかったレースも検出された。また,単一のコムギ赤さび病抵抗性遺伝子をもつ同質遺伝子系統19系統に対して接種試験を行った結果,従来の判別品種によって同定された11のレースは,同質遺伝子系統の反応によりさらに27に分けられた。試験されたすべての菌株に対して抵抗性皮応を示した同質遺伝子系統はLr24のみであった。