1994 年 60 巻 5 号 p. 600-607
植物ウイルスに対するモノクロナール抗体遺伝子をクローニングし,塩基配列を決定した。ジャガイモYウイルス外被タンパク質と結合するIgG3型のモノクローナル抗体(42C07)産生ハイブリドーマからmRNAを精製後,バクテリオファージλZAP IIベクターを用いてそのcDNAライブラリーを作製した。既知の重鎖と軽鎖の塩基配列から予測してそれぞれの可変領域と定常領域の一部の塩基配列について合成DNAを作製し,精製されたmRNAを鋳型としてpolymerase chain reaction法によりDNAを増幅した。増幅されたDNAについて塩基配列を決定した結果,抗体遺伝子と思われる塩基配列が見いだされ,これらをプローブとしてcDNAラィブラリーをスクリーニングしたところ,両鎖のそれぞれの遺伝子が含まれると思われるクローンが得られた。それらについて塩基配列を決定したところ,重鎖および軽鎖タンパク質をコードする塩基数はそれぞれ1383および717であり,推測されるアミノ酸数はそれぞれ461および239であった。これらのアミノ酸配列と既知のイムノグロブリンのアミノ酸配列を比較した結果,抗体遺伝子の全長であることが明らかとなった。さらに,重鎖および軽鎖のそれぞれを大腸菌Escherichia coliで発現させることに成功した。