抄録
宮古島のウイルス罹病パパイアからパパイア奇形葉モザイクウイルス(PLDMV)抗血清に反応しないひも状ウイルス(P126)が分離された。P126はパパイア,ウリ科植物およびアカザ科植物に感染した。P126, PLDMV (P56)およびPRSV-P (HA)はいずれも,パパイアでは奇形およびモザイクを生じ各分離株を区別するのは困難であったが,Chenopodium amaranticolor, C. quinoa, Cucumis metuliferus (Acc. 2459)およびキュウリ(ハウスキングL)ではP126, PRSV-P (HA)とPLDMV (P56)の感染性または病徴が異なり,両者を区別できた。P126の粒子長は800-820nmであった。P126はPRSV-Pと極めて近い血清関係が認められたが,PLDMVとの間には血清関係が認められなかった。これらの結果から,P126はPRSV-Pと同定され,わが国でのPRSV-Pの初発生が確認された。奄美大島,沖縄本島,宮古島および石垣島における両ウイルスの分布状況をELISA法,汁液接種,電顕観察などにより調べたところ,PLDMVは調査した全ての島から高率に検出されたが,PRSV-Pは宮古島および石垣島でわずかに検出され,南西諸島のパパイアにはPLDMVが多く発生しPRSV-Pの発生は少ないことが明らかになった。