抄録
ジャガイモ疫病菌の非親和性レースをエイジングしたジャガイモ塊茎に接種すると,フェニルアラニンアンモニア・リアーゼ(PAL) mRNAの一過的な蓄積が誘導されたが,親和性レースを接種した場合では僅かに誘導されるのみであった。一方,エリシターである疫病菌菌体壁成分で塊茎組織を処理すると30分以内にPAL mRNAの蓄積が誘導されたが,親和性レースに由来するサプレッサーで処理すると著しく蓄積が抑制された。非親和性レースのサプレッサーをエリシターと与えるとエリシター単独で処理した場合より早い段階でPAL mRNAの蓄積誘導が見られた。これらの蓄積動向はPAL活性動向とよく符合するものであった。サプレッサーによる防御反応の抑制効果とジャガイモ疫病におけるレース・品種間の特異性との関係について論じた。