日本植物病理学会報
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Pseudomonas tolaasiiによる揮発性成分の生産とその毒性
白田 昭
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1996 年 62 巻 2 号 p. 185-193

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抄録
日本の栽培ヒラタケから分離されたヒラタケ腐敗病細菌Pseudomonas tolaasii S8501菌株は,病原因子として毒素tolaasinを生産することが確かめられている。この菌株を供試してtolaasinとは異なる病原性因子の検索を試みたところ,本菌は毒性活性を有する揮発性成分を生産することが判明した。この揮発性成分は接種ヒラタケ上で多量に生産され,隣接する新鮮ヒラタケに腐敗を誘導することから,病原因子の一つであると判断された。そこで,この揮発性毒素をtovsinと仮称した。tovsinは植物種子の発芽を阻害し,きのこの糸状菌や植物,昆虫の病原糸状菌の伸長を阻害したが,細菌の増殖はあまり阻害しなかった。tovsinの活性の検出にはレタス種子の発芽阻害が適しており,1日で判定できた。また,tovsinの生産性はP. tolaasiiを接種するきのこや培地の種類によって著しく異なり,ヒラタケでは良く生産されたがエノキタケではほとんど生産されず,ペプトン液やキングB培地では比較的良く生産されたがPDAでは生産きれなかった。グルコースの添加は生産性を著しく阻害した。Tovsinは0°Cや-20°Cで捕捉され,アルカリ性で,刺激臭があり熱安定性であった。また,人工栽培室や収穫後詰められたパックの中に罹病ヒラタケが混在した場合,そこでtovsinが生産され発病を助長する可能性のあることを指摘した。
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