1996 年 62 巻 3 号 p. 227-233
ササニシキマルチラインがイネいもち病の発病に及ぼす影響を調べた。いもち病が自然発病しているササニシキ同質遺伝子系統単植区と混植区におけるいもち病の発病程度を比較したところ,混植区の発病程度は単植区から推定されるものよりも抑制された。試験圃場に優占するいもち病菌レースに感受性の系統と抵抗性の系統とを混植した区のいもち病発病抑制効果の方が,感受性の系統どうしを混植した区のものよりも優った。しかし,感受性の系統どうしを組み合わせた混植区においても,単植区と比較して,十分ないもち病発病抑制効果が認められた。また,ササニシキマルチラインのいもち病発病抑制には,「伝染源初期値の減少効果」と「バリヤー効果」が関与することが判明し,「誘導抵抗性」の関与も示唆された。さらに,ササニシキマルチラインの実用化技術を確立するために,ササニシキとその同質遺伝子系統9系統を種子重量で均等に混合し混植栽培したところ,十分ないもち病の発病抑制効果が認められた。