抄録
イネ萎縮ウイルス(RDV)の圃場分離株について,媒介昆虫を用いたくり返し接種を行い,病原性の異なる変異株を分離した。これらの変異株の間には血清学的な違いは見られなかった。また,RDV-Wから分離した,非常に激しい萎縮症状を引き起こすRDV-W-Mと軽微な病徴を示すRDV-W-Lの構造タンパクのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)での移動度は同じだった。3分離株から分離したそれぞれの変異株のゲノムセグメントをPAGEで比較したところ,いくつかのセグメントで移動度が異なっており,特にセグメント6 (S6)の移動度は共通して異なっていた。また,感染葉に含まれるウイルス抗原量と萎縮症状の激しさには相関関係があった。これらのことから,S6がRDVの増殖効率や病徴の程度に何らかの関連をもつ可能性が示唆された。