日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
62 巻, 5 号
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
  • 岩井 久, 大森 拓, 黒川 陽治, 牟田 辰朗, 荒井 啓
    1996 年 62 巻 5 号 p. 459-465
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    鹿児島県奄美大島においてパッションフルーツ(クダモノトケイソウ)の交配種‘大玉’(Passiflora edulis×P. edulis f. flavicarpa)に葉のモザイク症状および果実の奇形が発生し,その罹病株から長さ787nmのひも状ウイルスが分離された。本ウイルスはモモアカアブラムシによって非永続的に伝搬され,汁液接種により,Chenopodium amaranticolor, C. quinoa,ナス‘久留米大長’およびインゲンマメに局部感染し,ハナトケイソウ(Passiflora caerulea), P. foetidaおよびゴマに全身感染した。しかし,ムラサキトケイソウ(P. edulis),キイロトケイソウ(P. edulis f. flavicarpa)および大玉には,アブラムシならびに接ぎ木接種によってのみ感染した。大玉の罹病葉粗汁液中での本ウイルスの安定性を,インゲンマメ‘すじなし江戸川’への接種によって調べたところ,耐希釈性10-4∼10-5,耐熱性55∼60°C (10分)および耐保存性2∼3日(25°C)であった。大玉の感染葉の細胞質にはpotyvirus特有の管状封入体が観察された。SDS-PAGEによる本ウイルスの外被タンパクの分子量は約35,000であった。他のpotyvirusとの血清学的類縁関係を調べた結果,passionfruit woodiness virus (PWV)のブラジル株と近縁であり,ダイズモザイクウイルスやカボチャモザイクウイルスとの遠い関係が認められた。よって本ウイルスはPWVの1系統と考えられた。PWVの本邦のパッションフルーツにおける発生の確認はこれが初めてであり,今後は本ウイルスをPWV-AO (Amami Ohshima)と呼称し,ウイルス病の和名をパッションフルーツウッディネス病としたい。
  • 安藤 裕子, 上田 一郎, 村尾 和則, 木村 郁夫
    1996 年 62 巻 5 号 p. 466-471
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネ萎縮ウイルス(RDV)の圃場分離株について,媒介昆虫を用いたくり返し接種を行い,病原性の異なる変異株を分離した。これらの変異株の間には血清学的な違いは見られなかった。また,RDV-Wから分離した,非常に激しい萎縮症状を引き起こすRDV-W-Mと軽微な病徴を示すRDV-W-Lの構造タンパクのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)での移動度は同じだった。3分離株から分離したそれぞれの変異株のゲノムセグメントをPAGEで比較したところ,いくつかのセグメントで移動度が異なっており,特にセグメント6 (S6)の移動度は共通して異なっていた。また,感染葉に含まれるウイルス抗原量と萎縮症状の激しさには相関関係があった。これらのことから,S6がRDVの増殖効率や病徴の程度に何らかの関連をもつ可能性が示唆された。
  • 中村 茂雄, 本藏 良三, 岩井 孝尚, 宇垣 正志, 大橋 祐子
    1996 年 62 巻 5 号 p. 472-477
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    宮城県内のえそモザイク症状ソラマメから分離したインゲンマメ黄斑モザイクウイルス(BYMV) MB 4分離株のRNAから,oligo (dT)とランダムプライマーを用いたGubler & Hoffman法,および5'RACE法によって全長をカバーするcDNAクローンを得,その塩基配列を決定した。BYMVゲノムRNAは3' poly (A)を除いて9532塩基からなり,第191塩基から第9361塩基までひとつの長いORFが見いだされた。このORFは3056アミノ酸から成るタンパク質(分子量348K)をコードしており,すでに全塩基配列が報告されているpotyvirusとの比較から,ウイルスプロテアーゼによりP1, HC-Pro, P3, 6K1, CI, 6K2, NIa-VPg, NIa-Pro, NIb, CPの10個のポリペプチドに切断されると予想された.これらのアミノ酸配列を他のpotyvirusと比較したところ,NIbが最も高い相同性を示し(57-65%),次いでCP (52-65%), CI (47-61%), NIa (43-50%), HC-Pro (39-50%), 6K1 (36-53%), 6K2 (30-49%), P3 (18-26%)の順であり,P1は9-22%と低く,そのサイズもウイルス間で大きな開きがあった。
  • 石川 亮, 藤森 健一, 松浦 一穂
    1996 年 62 巻 5 号 p. 478-482
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    バリダシン®の有効成分であるバリダマイシンA (VM-A)はRhizoctonia solaniによるイネ紋枯病に卓効を示す薬剤である。VM-AはR. solani由来のトレハラーゼを阻害することが報告されている。本報告では,Pseudomonas solanacearumに対するVM-Aの抗菌活性と,トマト青枯病防除効果について調べた。VM-Aはトレハロースを唯一の糖源としたときのみに,P. solanacearumに対して抗菌活性を示し,その活性は増殖抑制効果であった。トレハロース液体培地に50μg/mlのVM-Aを処理したときのP. solanacearumの増殖速度は,培養1から8日後までは,糖源を含まない培地のときと同程度に強く抑制された。VM-Aは温室内でのポット試験,圃場試験で高い防除効果を示した。圃場試験で,VM-Aは250μg/mlの茎葉散布(接種5日前および2日後)で,接種4週間後に47.4%の防除効果を示した。無処理のトマト茎からは,地上部から5cmの範囲でP. solanacearumが3.84×1010cfu/ml生重検出されたが,VM-A処理のトマトの同部位からは病原菌は2.13×109cfu/ml生重しか検出されなかった。以上の結果より,VM-Aはトマト内でのP. solanacearumの増殖を抑制することで,青枯病の発病遅延効果を発現するものと考えられた。
  • 山下 一夫, 酒井 淳一, 花田 薫
    1996 年 62 巻 5 号 p. 483-489
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    モザイク症状を呈するニンニク(Allium sativum L.)から長さ700&800nmのひも状ウイルスが分離された。本ウイルスはニンニクおよびリーキに全身感染したほか,Chenopodium murale, C. quinoaおよびセンニチコウなどに局部感染した。本ウイルスはチューリップサビダニで伝搬されたが,アブラムシでは伝搬されなかった。純化ウイルスから,SDS-PAGEにより30kDaおよび28.5kDaのタンパク質が検出された。本ウイルスはリーキイエローストライプウイルス,ネギ萎縮ウイルスおよびニンニク潜在ウイルスの各抗血清には反応せず,ニンニクおよびC. muraleの感染細胞内には細胞質封入体は観察されなかった。本ウイルスゲノムRNAの3'末端から2518塩基の配列を決定した。この領域は,40kDaタンパク質,外被タンパク質と推定される28kDaタンパク質および15kDaタンパク質をコードすると思われた。これらの遺伝子の配置および翻訳産物のアミノ酸配列は,未分類のshallot virus Xおよびgarlic virus (GV) -A, -B, -C, -Dと類似していた。28kDaタンパク質のアミノ酸配列の相同性は,GV-Cとは98%,他の4種ウイルスとは60&67%であったことから,本ウイルスとGV-Cは同種のウイルスであると考えられた。本研究により性状が明らかになったウイルスを,ニンニクダニ伝染モザイクウイルス(garlic mite-borne mosaic virus: GMbMV)と命名するよう提案したい。
  • 勝又 治男, 尾形 正, 松本 直幸
    1996 年 62 巻 5 号 p. 490-491
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    体細胞的和合性に基づいて,紫紋羽病菌(Helicobasidium mompa)の個体群構造を調査した。その結果,福島県の1リンゴ果樹園における本菌の個体群構造は比較的単純で,特定のジェネットが優越して土壌中を栄養的に進展していることが示唆された。本知見から新しい防除法の可能性が考えられた。
  • 西野 友規, 藤森 嶺
    1996 年 62 巻 5 号 p. 492-494
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Xanthomonas campestris pv. poae JT-P482株によるスズメノカタビラの発病におよぼす,接種濃度(104cfu/ml, 106cfu/ml, 108cfu/ml),気温(30°C/25°C, 20°C/15°C, 10°C/5°C),湿度(30-40% RH, 90% RH)の影響を,育苗器内で調査した。その結果,接種濃度が106cfu/ml以上のときには,気温あるいは湿度の高低にかかわらず,JT-P482株はスズメノカタビラを枯死させる能力を有しており,特に高温および乾燥ではさらに助長されることが明らかとなった。
  • 根岸 秀明
    1996 年 62 巻 5 号 p. 495-497
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1993年,栃木県益子町の休耕田において,葉に褐色の斑点を示すオモダカを発見した。病斑部から病原菌が分離され,分生胞子の形態および形成様式からCylindrocapon属の菌であると同定されたが,分生胞子の形態,小型分生胞子や厚膜胞子を形成しない等の点から過去に記載されたCylindrocarpon属のいずれの種とも異なっていた。本菌を新種であると判断し,Cylindrocarpon sagittariae Negishiと命名・記載した。
  • 下間 奈津美, 林 昌治, Kamal A. MALIK, 一瀬 勇規, 白石 友紀, 山田 哲治
    1996 年 62 巻 5 号 p. 498-501
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    エンドウ褐紋病菌が胞子発芽液中に分泌する低分子糖ペプチド(supprescin)は,宿主エンドウの原形質膜ATPase活性を阻害することにより初期の防御応答を抑制している。植物病原細菌が病原糸状菌のsupprescinと類似の機能を有する生体分子を保有するか検討を加えた。暗黒下で生育させた幼エンドウ植物体の上胚軸あるいは成熟葉にエンドウつる枯れ病細菌を接種し,in vivoにおける原形質膜ATPase活性をリン酸鉛の沈着によって組織化学的に解析した結果,親和性関係においてのみ原形質膜ATPaseの活性が一時的に阻害された。レース・品種の異なる組み合わせにおいても原形質膜ATPaseの阻害は親和性レースを接種した組織においてのみ観察され,非親和性レースの接種では観察されなかった。植物病原糸状菌のsupprescinに類似の機能を有する植物病原細菌のサプレッサー分子の存在の可能性,さらに病原細菌の病原性における作用機作について論ずる。
  • 君島 悦夫, 小林 慶範, 小林 享夫
    1996 年 62 巻 5 号 p. 502-504
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1995年春,青森県木造町のバラ栽培温室内で剪定部分から枝が褐色に変色し,葉が黄化枯死すると共に株全体が枯れ上がる被害が発生した。被害枝の表皮下には,湿潤条件下でPestalotiopsis属菌の子実体が多数認められ,単胞子分離によって得られた菌株は有傷接種によりバラに枝枯れ症状を再現し,再分離された。また本菌はポプラの新枝およびヤブコウジの葉にも病原性を示した。本菌は形態的特徴からPestalotiopsis populinigrae (Sawada et Ito) Moreletと同定された。本菌によるバラの病害は未報告と考えられるので,病名をバラペスタロチア病と提案した。
  • 守川 俊幸, 築尾 嘉章, 野村 良邦
    1996 年 62 巻 5 号 p. 505-507
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    収穫後のチューリップ球根への褐色腐敗病細菌Pseudomonas gladioliや黒腐病細菌P. andropogonisの接種が,貯蔵中の両病害とFusarium oxysporum f. sp. tulipaeによる球根腐敗病の発生に及ぼす影響を調査した。チューリップ17品種を用いた浸漬接種試験では,黒腐病細菌を接種すると球根腐敗病の自然発病が助長され,褐色腐敗病細菌を接種すると黒腐病の自然発病が抑制された。さらに,5ヵ年の両病原細菌の接種試験の結果から,褐色腐敗病細菌の接種によって球根腐敗病の自然発病が抑制される傾向を認めた。また,これら3病害の病原の混合接種試験の結果,黒腐病細菌の共存下で,褐色腐敗病と球根腐敗病の発病率が高まる傾向が認められ,褐色腐敗病細菌の共存下では黒腐病と球根腐敗病の発病は抑制された。培地上で,褐色腐敗病細菌は球根腐敗病菌と黒腐病細菌の生育を著しく阻害したが,黒腐病細菌にはこのような抗菌活性は認められなかった。
  • 木場 章範, 豊田 和弘, 一瀬 勇規, 山田 哲治, 白石 友紀
    1996 年 62 巻 5 号 p. 508-512
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    非病原菌を接種したエンドウ,ササゲ無傷葉上では10分以内にNBT還元活性が有意に上昇したが,褐紋病菌(病原性系統OMP-1)接種エンドウ葉では水対照区レベルであった.OMP-1エリシターは5分以内に両植物葉のNBT還元活性を上昇させたが,同菌のサプレッサーはこの活性上昇をエンドウでは阻害し,ササゲでは逆に誘導した.これら褐紋病菌のシグナル物質で誘導されるNBT還元活性はSOD共存下で水対照区レベルまで阻害された.以上の結果は,植物は表層に接触した病原菌あるいはその代謝産物を速やかに認識して応答できること,O2-生成は無傷植物組織の防御応答と関連があること,褐紋病菌はサプレッサーによって宿主のO2-生成を種特異的に回避していることを強く示唆している.
  • 陳 剣波, 佐古 宣道, 大島 一里, 渡辺 雄一郎
    1996 年 62 巻 5 号 p. 513-516
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法を用いてタバコモザイクウイルスラッキョウ系統(TMV-R)を特異的に検出する方法を確立した。TMV-Rの塩基配列をもとに,2組のプライマー(1Pおよび1MとRS1およびRS2)を合成した。精製した6系統(TMV-R, TMV-OM, TMV-U1, TMV-L, TMV-P, TMV-Ib)のタバモウイルスRNAを鋳型にして,RT-PCRを行ったところ,1Pおよび1Mのプライマーを用いた場合,全系統からDNAの増幅が観察されたが,RS1およびRS2のプライマーを用いた場合は,TMV-RでのみDNAの増幅が観察された。また,感染葉からの全核酸を鋳型にしてRT-PCRを行った場合も,同様な結果が得られた。さらに,RS1およびRS2のプライマーを用いて,宮崎県の圃場から採集された萎縮症状を呈したラッキョウについて検討した結果,5サンプルのうち4サンプルからTMV-Rが検出され,RT-PCR法がTMV-Rの特異的検出に有効な方法であることが明らかとなった。
  • 1. 花腐細菌病菌に対する花蕾の時期別感受性
    三好 孝典, 橘 泰宣
    1996 年 62 巻 5 号 p. 517-522
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1990年から1992年の3ヵ年間,雨除け栽培のキウイフルーツ花蕾へ花腐細菌病菌(Pseudomonas syringae)を4月から5月にかけて6ないし8回接種し,接種した花蕾のがく裂開日,開花日,接種時の花蕾発育程度および発病の有無を調査し,接種から開花までの日数,接種からがく裂開までの日数および接種時の花蕾発育程度と発病との関係を検討した。接種から開花までの日数では開花前の10日から19日の発病が高く,接種からがく裂開までの日数ではがく裂開前の10日間の発病が有意に高くなった。がく裂開から開花までの平均日数は約10日であった。花蕾の発育程度ではがく裂開段階までの発病が高く,それ以降低下した。これらのことより,花蕾の感受性は開花前の10から19日が最も高く,この時期はがく裂開前の10日間であり,発病にはがく裂開前に病原細菌が花蕾に定着するとともに,がく裂開段階までの花蕾内で病原細菌が増加していることが必要であると考えられた。
  • 2. 花蕾の発育速度と発病との関係
    三好 孝典, 橘 泰宣
    1996 年 62 巻 5 号 p. 523-527
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1993年を除く1989年から1994年までの5年間,キウイフルーツ89樹を供試し,1樹当たり100から200花蕾について,がく裂開日,開花日および花腐細菌病の発生との関係を調査した。がく裂開日と発病との関係では,がくが早く裂開する花蕾ほど発病が多くなり,負の相関が認められた。開花時期と発病との関係では,開花が遅い花蕾ほど発病が多くなり,正の相関が認められた。がく裂開から開花までの日数と発病との関係では,日数が長くなる花蕾ほど発病が増加し,正の相関が認められた。次に新梢における着花位置と発病との関係では,新梢先端に着花している花蕾の発病が最も少なく,また,がく裂開から開花までの日数も最も少なかった。新梢に対する接種試験でも先端花の発病が少なく,新梢の着花位置別花蕾からの病原細菌の分離率に,差異は認められなかった。新梢先端の花蕾での発病の減少は,がく裂開から開花までの日数の差に起因するものと判断された。以上の結果から,本病の発生は発育速度が遅い花蕾ほど多くなるものと考えられた。
  • 3. 環状剥皮による本病の防除とその発病抑制機構
    三好 孝典, 橘 泰宣
    1996 年 62 巻 5 号 p. 528-532
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    主幹への環状剥皮によるキウイフルーツ花腐細菌病の抑制効果を検討した。剥皮時期では開花約25日前まで,剥皮の幅では5mmと7mm幅でともに安定した防除効果が認められた。環状剥皮の発病抑制機構を解明するため,病原細菌を接種して発病抑制効果,含水率の変化,新梢の伸長抑制効果および花蕾での結露付着率の変化について検討した。環状剥皮樹に病原細菌を接種しても防除効果は顕著に認められた。含水率の変化は環状剥皮樹および無処理樹で有意な差は認められず,発病抑制要因は含水率の変化によるものとは考えられなかった。環状剥皮により,新梢の伸長抑制および花蕾での結露付着率の減少が認められた。また,結露中には病原細菌の生存が確認された。これらのことから,環状剥皮処理による発病抑制機構は新梢の伸長を抑制することにより,花蕾における結露の付着を減少させることが1つの要因と考えられた。
  • 4. 花腐細菌病の発生と気象要因の関係
    三好 孝典, 新部 昭夫, 橘 泰宣
    1996 年 62 巻 5 号 p. 533-536
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1987年から1995年までの9年間,209樹のキウイフルーツ花腐細菌病の発生と開花日を調査し,開花日からさかのぼって60日前までを10日ごとにステージ1から6に類別し,各ステージでの発病率と10種気象要因(気温,最高気温,最低気温,気温較差(最高-最低気温),湿度,最低湿度,日照時間,日射量,降水量および降雨日数)との関係について検討した。開花日と発病率との関係では正の相関(危険率5%)が認められた。ステージ別気象要因と発病率との相関で0.5以上の相関係数を示した要因は,ステージ2の気温,最高気温,湿度,降水量および降雨日数,ステージ3の気温差,湿度,最低湿度および日射量,ステージ4の最低気温,ステージ5の気温および最高気温の12要因であった。この12種要因を用い,変数増加法による重回帰分析を行った結果,ステージ2の降水量,ステージ2の最高気温,ステージ3の気温較差および湿度,ステージ5の気温の5気象要因に有意差が認められ,かつそれらの要因の寄与率は61.2%と極めて高かった。このことから,開花10日から29日前の気象要因,特に前述の5要因が本病発生に強く影響を及ぼすことが明らかとなった。
  • 兼平 勉, 堀越 紀夫, 山北 祐子, 篠原 正行
    1996 年 62 巻 5 号 p. 537-540
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    In 1994 and 1995, hydrangea phyllody occurred in Tochigi, Shizuoka and Oita Prefectures, Japan. The affected plants (Hydrangea macrophylla and H. serrata) showed phyllody and proliferation of flower organs, as well as stunting and dieback. Electron microscopy revealed the presence of phytoplasmas in the phloem sieve elements of affected sepals and leaves. The phytoplasmas were transmitted to healthy Catharanthus roseus by graft inoculation. Using primers for 16S rDNA by polymerase chain reaction (PCR), DNA fragments of 1.3 and 0.75kbp were amplified in DNA samples extracted from affected hydrangeas but not in those extracted from healthy plants. This is the first report on the occurrence of hydrangea phyllody in Japan.
  • 佐藤 衛, 松浦 昌平, 平子 喜一, 福本 文良, 我孫子 和雄
    1996 年 62 巻 5 号 p. 541-543
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    In June to September 1995, a new powdery mildew was found on baby's breath (Gypsophila paniculata L.) in Hiroshima and Fukushima, Japan. A white, powdery mycelial colony appeared on the leaves and stems of the plants. Conidia were ellipsoid to cylindric, 31-54×14-22μm, forming singly on conidiophores. Lobed appressoria differentiated on the germ tubes from conidia. Cleistothecia were not found on diseased plants. On the basis of the morphology of conidial stage, the fungus was proposed to be an Oidium sp. of the Erysiphe polygoni type. “Powdery mildew of baby's breath” was proposed for the disease.
  • 森脇 丈治, 水野 明文, 佐藤 守, 門田 育生, 西山 幸司
    1996 年 62 巻 5 号 p. 544-547
    発行日: 1996/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Twenty-five strains of Pseudomonas syringae pv. glycinea were studied for their ability to produce coronatine and symptoms on soybean leaves. Seven strains induced lesions accompanied by halos on soybean leaves after natural and artificial infection, whereas the other strains induced lesions without halos. Five of the seven halo-inducers also produced coronatine on potato tuber tissues, whereas the 18 non-halo inducing strains did not. However, all 25 strains produced coronatine in Woolley's liquid medium. In addition, all twenty-five strains had a pCOR1-like plasmid in size. The cfl region in pCOR1, which is correlated with coronatine production in P. syringae pv. atropurpurea, was also detected in the pCOR1-like plasmids in all 25 strains. These results indicate that P. syringae pv. glycinea essentially has coronatine-producing ability, but its expression in planta may be regulated by a control system.
feedback
Top