抄録
バリダシン®の有効成分であるバリダマイシンA (VM-A)はRhizoctonia solaniによるイネ紋枯病に卓効を示す薬剤である。VM-AはR. solani由来のトレハラーゼを阻害することが報告されている。本報告では,Pseudomonas solanacearumに対するVM-Aの抗菌活性と,トマト青枯病防除効果について調べた。VM-Aはトレハロースを唯一の糖源としたときのみに,P. solanacearumに対して抗菌活性を示し,その活性は増殖抑制効果であった。トレハロース液体培地に50μg/mlのVM-Aを処理したときのP. solanacearumの増殖速度は,培養1から8日後までは,糖源を含まない培地のときと同程度に強く抑制された。VM-Aは温室内でのポット試験,圃場試験で高い防除効果を示した。圃場試験で,VM-Aは250μg/mlの茎葉散布(接種5日前および2日後)で,接種4週間後に47.4%の防除効果を示した。無処理のトマト茎からは,地上部から5cmの範囲でP. solanacearumが3.84×1010cfu/ml生重検出されたが,VM-A処理のトマトの同部位からは病原菌は2.13×109cfu/ml生重しか検出されなかった。以上の結果より,VM-Aはトマト内でのP. solanacearumの増殖を抑制することで,青枯病の発病遅延効果を発現するものと考えられた。