日本植物病理学会報
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日本産オオムギ黄萎ウイルスPAV分離株の全塩基配列
佐野 義孝丹野 史典加藤 義直松原 旭小島 誠
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1996 年 62 巻 6 号 p. 566-571

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抄録
日本において分離されたオオムギ黄萎ウイルスPAV分離株(BYDV Jpn-PAV)のゲノムRNAの全塩基配列を決定した。BYDV Jpn-PAVのゲノムは5667塩基からなり,そのウイルスセンス側に6個の翻訳読み取り枠(ORF)が存在した。得られた塩基配列と推定される各ORFのアミノ酸配列を,オーストラリア産(Vic-PAV)および北米産(P-PAV)のPAV2分離株,およびMAV分離株(MAV-PS1)のものと比較した。各ORFのうちRNA複製酵素をコードすると考えられているORF1とORF2においては,全ての分離株間で97%以上のアミノ酸が保存されていた。Jpn-PAVとMAV-PS1間の配列比較では,ORF3からORF6においてかなりの相違が見られた。Jpn-PAVと他のPAV2分離株間の比較では,特にORF6領域内で配列の相違が認められた。ORF6を除く各ORF間の比較では高いアミノ酸配列相同性が見られたが,Jpn-PAVのORF6はVic-PAVと61%, P-PAVと78%の相同性しか示さなかった。配列比較の結果,Jpn-PAVがオーストラリア分離株よりも北米あるいはヨーロッパ産のPAV分離株により近縁であることが明らかとなった。
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