抄録
オオムギの病原菌E,Erysiphe graminis f. sp. hordeiの発芽胞子から得た水溶性抽出物でオオムギ子葉鞘を処理し,本菌を接種したところ,最大で54%の感染抑制が見られた。その活性は分子量10,000以下の熱耐性成分に依存していた。抽出物をHPLCで分画して得た各分画で子葉鞘の下面を処理し上面に本菌を接種したところ,二番目の画分で感染が約60%抑制された。本抽出物の溶液に浮かべた子葉鞘上で本菌胞子の形態形成を調べたところ,発芽から侵入に至るまでの過程は阻害されなかった。したがって,本抽出物は子葉鞘細胞の拒否性を高め,結果的に本菌の感染を抑制する一種のエリシター成分と考えられた。この成分は,セルロース膜上に接種直後の未発芽胞子および同膜上で3~12時間培養した発芽胞子から得られたので,本菌の胞子はこの成分を構成的にもっており,発芽に伴って遊離すると推定された。