抄録
イネもみ枯細菌病菌(Pseudomonas glumae)の毒素,トキソフラビンの産生性に特異的な2種のタンパク質を特定することができた。トランスポゾン突然変異誘発法で作出した毒素非産生変異株はイネ幼苗に対して生育阻害作用をほとんど示さず,病原力をほぼ喪失していた。この結果から毒素が本菌の病原力と密接に関連していることが示された。さらに毒素の産生性に特異的なタンパク質を探索するため,野生株と毒素非産生株を供試して二次元電気泳動法でタンパク質の泳動パターンを比較したところ,変異株では2つの酸性タンパク質,TRP-1, TRP-2を欠失していた。本菌を振とう培養すると,毒素は培養初期には検出されず,対数増殖期の後期から定常期の初期にかけて初めて検出されることに着目して,これらのタンパク質についても培養中の各ステージでの発現を調べた。その結果,これらのタンパク質は対数増殖期の後期から定常期の初期に初めて検出され,毒素が初めて検出される時期とよく一致していた。また,TRP-1抗体を用いたウエスタン解析により,P. glumae, P. gladioli,およびP. plantariiの各菌株についてTRP-1の検出を行ったところ,TRP-1は毒素産生能を有するP. glumae, P. gladioliの菌株においてのみ検出された。