日本植物病理学会報
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64 巻, 2 号
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  • 鈴木 文彦, 朱 亜峰, 澤田 宏之, 松田 泉
    1998 年 64 巻 2 号 p. 75-79
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネもみ枯細菌病菌(Pseudomonas glumae)の毒素,トキソフラビンの産生性に特異的な2種のタンパク質を特定することができた。トランスポゾン突然変異誘発法で作出した毒素非産生変異株はイネ幼苗に対して生育阻害作用をほとんど示さず,病原力をほぼ喪失していた。この結果から毒素が本菌の病原力と密接に関連していることが示された。さらに毒素の産生性に特異的なタンパク質を探索するため,野生株と毒素非産生株を供試して二次元電気泳動法でタンパク質の泳動パターンを比較したところ,変異株では2つの酸性タンパク質,TRP-1, TRP-2を欠失していた。本菌を振とう培養すると,毒素は培養初期には検出されず,対数増殖期の後期から定常期の初期にかけて初めて検出されることに着目して,これらのタンパク質についても培養中の各ステージでの発現を調べた。その結果,これらのタンパク質は対数増殖期の後期から定常期の初期に初めて検出され,毒素が初めて検出される時期とよく一致していた。また,TRP-1抗体を用いたウエスタン解析により,P. glumae, P. gladioli,およびP. plantariiの各菌株についてTRP-1の検出を行ったところ,TRP-1は毒素産生能を有するP. glumae, P. gladioliの菌株においてのみ検出された。
  • 小金澤 碩城, 佐藤 豊三, 笹谷 孝英
    1998 年 64 巻 2 号 p. 80-84
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    殺菌剤プロベナゾールは糸状菌や細菌に対する全身獲得抵抗性を誘導することが知られている。本剤とその代謝産物であるサッカリンのタバコモザイクウイルス(TMV)による病斑形成に及ぼす影響について検討した。局部病斑形成宿主であるタバコ品種Xanthi ncに処理した場合,両剤共に処理したタバコでは無処理のものに比較してTMVによる局部病斑の出現を早め,かつ病斑の大きさを減少させる効果が認められた。また,全身感染宿主であるタバコ品種SamsunではTMVによるモザイク症状のマスキングを促進する働きが認められた。これらの結果はプロベナゾールとサッカリンは広範囲の病原体に対する抵抗性を誘導することを示していると考えられる。
  • 闕 暁楓, 高松 則之, 細川 大二郎
    1998 年 64 巻 2 号 p. 85-90
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ジャガイモXウイルス接種タバコ培養細胞プロトプラストの磨砕液より,内在する鋳型RNAをもとにin vitroにおいてウイルスゲノムRNA (6.4kb)と二種類のサブゲノムRNA (2.1kbと0.9kb)を合成する粗膜画分を得た。これらのRNA合成産物はRNaseに対する感受性からゲノム長RNAの多くは複製中間体であり,サブゲノム長RNAは一本鎖であることが分かった。また,リボヌクレアーゼプロテクション実験により,これらの合成RNAはほとんどが(+)鎖RNAであった。さらに,本膜画分をmicrococcal nucleaseで処理すると,内在性鋳型RNAは消化され,RNA合成産物はみられなくなったが,PVX-RNAを鋳型として添加するとゲノム長RNAの合成のみが認められ,二種類のサブゲノム長RNAの合成はみられなかった。また,本膜画分をプロテナーゼ(V8プロテナーゼおよびトリプシン)で処理するとゲノム長RNAの合成は影響を受けなかったが,二種類のサブゲノム長RNAの合成活性は消失した。さらに,界面活性剤(Brij 58)を用いて可溶化を行ったところ,サブゲノム長RNAの合成活性は本膜画分から可溶化されたが,ゲノム長RNAの合成活性は可溶化されなかった。以上の結果から,PVXのゲノムRNA,とサブゲノムRNAは膜の異なる部位において合成され,前者は膜の内部に局在するのに対し,後者は膜の表面近くに存在すると推測された。
  • 米山 勝美, 河野 芳樹, 山口 勇, 堀越 守, 廣岡 卓
    1998 年 64 巻 2 号 p. 91-96
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネもみ枯細菌病菌B. glumaeの病原性因子を調べる目的でトランスポゾン(Tn)突然変異誘発法を用いて病原性欠失変異株を分離することを試みた。野生株へのTn4431の導入後,得られた変異株から毒素生産性欠失株を選抜し,さらにイネ催芽種子を用いて病原性欠失変異株を選抜した。これらの病原性欠失変異株からサザーンブロット解析によりゲノムDNAの1ヵ所だけにTn挿入が起こっている変異株No.19株を分離した。このNo.19変異株から調製したTnに隣接するゲノムDNA断片をプローブとして,B. glumae野生株のコスミドゲノムライブラリーからコロニーハイブリダイゼーション法によりプローブ陽性を示す6つのクローンを単離した。これらクローン中のコスミドを接合伝達によりNo.19変異株に導入した結果,形質転換株No.19-61では毒素生産性が相補されると同時に,病原性が回復されることが認められた。また,No.19-61株の産生する毒素を単離・精製し,構造解析を行ったところ,トキソフラビンであると同定された。以上のように,トキソフラビン非生産株No.19では病原性を示さず,毒素産生回復株No.19-61では病原性を回復することから,B. glumaeによるイネ苗腐敗症の病徴発現における発病力としてトキソフラビンが必須要因であることが示唆された。
  • 古賀 仁一郎, 大島 清美, 小川 紀子, 小笠原 長宏, 志村 勝
    1998 年 64 巻 2 号 p. 97-101
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    植物はその病原菌と接触するとファイトアレキシン生成などの様々な化学的物理的防御反応により自分自身を守ることが知られている。これらの防御反応は病原菌が生産するエリシターにより誘導される。イネではカルスの液体培養においてエリシター活性を測定するバイオアッセイ系が確立されているが,植物体においてエリシター活性を測定するバイオアッセイ系は未だに確立されていない。これは,イネの葉ではエリシター処理によってファイトアレキシンが誘導されにくいためである。そこで,我々はイネを低温度,高照度,高湿度で栽培することにより,葉においてエリシター活性を測定する新しいバイオアッセイ系を確立することに成功した。このバイオアッセイ系では,イネを22°Cの低温,30,000luxの高照度,80%の高湿度で栽培し,第5葉が完全に展開した時に,その第4葉にいもち病菌であるMagnaporthe griseaやジャガイモの病原菌であるPhytophthora infestansの菌体抽出物を処理をすることにより,イネのファイトアレキシンであるモミラクトンやファイトカサンが顕著に誘導された。
  • 中村 仁, 金子 繁, 山岡 裕一, 柿嶌 眞
    1998 年 64 巻 2 号 p. 102-109
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ヤナギさび病菌であるMelampsora属菌9種の識別方法を検討するために,polymerase chain reaction (PCR)により増幅したリボソームDNA (rDNA)のinternal transcribed spacer (ITS)領域を用いてsingle-strand DNA conformation polymorphism (SSCP)分析を行った(PCR-SSCP分析)。本属菌9種49菌株からPCRにより増幅したITS 1領域(産物長約300∼320bp)を用いてSSCP分析を行った結果,5種(M. capraearum, M. epiphylla, M. larici-urbaniana, M. microsora, M. yezoensis)は種特異的パターンを示した。一方,M. chelidonii-pierotiiM. coleosporioides,ならびにM. epiteaM. humilisはそれぞれ同一パターンを示した。さらにこれら4種について,増幅したITS 1領域およびITS 2領域(5.8S rDNAを含む)をそれぞれ制限酵素で切断して得られた複数の断片を用いてSSCP分析を行ったが,M. chelidonii-pierotiiM. coleosporioides,ならびにM. epiteaM. humilisはそれぞれ同一パターンを示し,互いを識別することはできなかった。各組み合わせにおける2種は形態的にも類似しており,それぞれ近縁な関係にあると考えられた。PCR-SSCP分析は非常に簡便な操作で高感度にDNA多型を検出できることから,ヤナギさび病菌の識別法として有用であると考えられた。
  • 大崎 秀樹, 佐藤 義彦, 工藤 晟
    1998 年 64 巻 2 号 p. 110-115
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    無病徴のニホンナシから抽出した核酸を5%ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分析したところ,特定の品種から抽出した核酸にのみ特異的に共通して3本のバンドが認められた。これらの核酸は,樹皮,葉,花弁そして花弁を含む花から検出された。これらは,DNase Iによって消化されず,RNase Aに対しては,2×SSC下では消化されず,0.1×SSC下で消化された。さらに,15%エタノール存在下でCF-11セルロースパウダーに吸着された。以上の結果から,3本のバンドは2本鎖(ds) RNAであることが判明した。イネ萎縮ウイルスのdsRNAをマーカーとした実験により,分子量はそれぞれ1.08, 0.97, 0.90×106と計算された。また,dsRNAが検出された数品種は親子関係にあるため,交配による後代への伝染を調べた。その結果,dsRNAを種子親だけが持っている場合は40検体中31検体から,花粉親だけが持っている場合は12検体中12検体から,両方が持っている場合は5検体中5検体から,dsRNAが検出され,高い確率で後代に伝染することが判明した。しかし,本dsRNAsの接木伝染は認められなかった。これらの知見から,本dsRNAが種子伝染性潜伏ウイルス由来であることが示唆された。
  • 大貫 正俊, 花田 薫
    1998 年 64 巻 2 号 p. 116-120
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    アブチロンモザイクウイルス(AbMV),タバコ巻葉ウイルス(TbLCV),サツマイモ葉巻ウイルス(SPLCV)の感染植物から全核酸を抽出し,Rojas et al.の5組のプライマーおよびBriddon & Markhamが報告した1組のプライマー(BMプライマー)を用いてPCR増幅した。AbMV感染葉からは6組すべてのプライマーにより特異的断片が増幅され,TbLCVおよびSPLCV感染葉からはBMプライマーでのみ特異的断片が得られた。BMプライマーによるPCR産物をクローニングし,遺伝子間領域(IR)の一部塩基配列を決定した。3種ウイルスのIR中にはジェミニウイルスに特微的なTAATATTACの9塩基の配列が認められた。また,IR中の反復配列(iteron)の配置からAbMVはサブグループIII,西半球型,TbLCVおよびSPLCVはサブグループIII,東半球型のジェミニウイルスであることが判明した。
  • 中澤 靖彦, 内田 景子
    1998 年 64 巻 2 号 p. 121-124
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1993年7月に神奈川県のガラス温室内のイチゴ(品種:女峰)葉上で,イチゴうどんこ病菌の完全世代を発見した。子のう殻は暗褐色,球形,直径90∼100μm。殻壁細胞は不規則で直径は8∼22μm。付属糸は子のう殻周辺に多数生じ,菌糸状,湾曲し,分岐せず,隔膜を有し,長さは子のう殻の直径の0.7∼4倍,太さ4∼6μm,基部から褐色を帯びるが先端にかけて無色。子のうは子のう殻内に1個形成され,卵形∼楕円形,大きさ60∼94×56∼74μm。子のう胞子は子のう内に8個形成され,楕円形,大きさ16∼32×14∼24μm。菌糸は白色で,成熟しても着色しない。分生胞子はフィブロシン体を有し,卵形∼楕円形,大きさ20∼40×18∼28μm,発芽管はSphaerotheca Pannosa型。以上の特徴より本菌をSphaerotheca aphanis (Wallr.) Braun var. aphanisと同定した。
  • 草場 基章, Le Dinh DON, Alfredo S. URASHIMA, 衛籐 由希子, 土佐 幸雄, 中屋敷 均, 山本 正晃, ...
    1998 年 64 巻 2 号 p. 125-128
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    MAGGYをプローブとしたDNAフィンガープリント分析により,世界各地から採集したイネいもち病菌と日本産野生イネ科植物いもち病菌との遺伝的類縁関係を調査した。供試菌から得られたDNAフィンガープリントに基づきクラスター分析を行ったところ,日本産と外国産イネ菌の類縁性は,27%以下であった。一方,日本産ネズミムギ,ハルガヤ,クサヨシ,オニノウシノケグサ各菌は日本産イネ菌に対して80%以上の高い類縁性を示した。以上の結果から,これら日本産の野生イネ科植物の菌はイネ菌がこれら植物に感染したものであると推定される。
  • 竹内 妙子, 峯岸 直子, 酒井 和彦, 白石 俊昌, 梅本 清作
    1998 年 64 巻 2 号 p. 129-132
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1993年秋∼1994年春に千葉県,埼玉県,群馬県の秋冬ネギで葉鞘部が腐敗する症状が多発した。葉鞘部表面に暗褐色∼黒色の小菌核を多数形成し,ときに病斑を中心に縦に亀裂が生じ,亀裂部から内葉が突出する。いずれの地域の症状からも,同一性状のBotrytis sp.が分離され,分離菌の接種によって病徴が再現された。菌核の形状,分生子の大きさ,分生子梗先端のconcertinalike collapseの形成から本菌をBotrytis squamosa Walkerと同定した。病名をネギ小菌核腐敗病(Small sclerotial rot)とした。本菌はネギのほか数種アリウム属に病原性を示した。
  • 奥 尚
    1998 年 64 巻 2 号 p. 133-136
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    アズマガヤ(Asperella longe-aristata)より分離されたうどんこ病菌(Blumeria graminis)の寄主範囲と分化型について検討した。アズマガヤ分離菌株は原寄主のアズマガヤの他にコムギ(Triticum)属植物に対して病原性を有しており,コムギうどんこ病菌(B. graminis f. sp. tritici)はアズマガヤに対して病原性を有していた。B. graminis f. sp. agropyri, bromi, dactylidis, hordei, poaeならびにsecalisはいずれもアズマガヤに病原性を示さなかった。さらに,アズマガヤ分離菌株はコムギうどんこ病菌と交配が可能であり,形成された子のう胞子はアズマガヤとコムギに対して病原性を有していた。以上から,アズマガヤより分離されたうどんこ病菌の分化型(f. sp.)をtriticiとした。
  • 川越 仁
    1998 年 64 巻 2 号 p. 137-138
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    The optimum temperature and relative humidity (RH) for frogeye leaf spot development on sweet pepper were 20-25°C and above 95% RH, respectively. Latent periods after inoculation were closely related to temperature and RH conditions. For lesion appearance in a plastic house, about 22 hours of the optimum condition, or about 150 hours at 15°C and above 95% RH. The accumulated hours would be useful for predicting the onset of this disease in winter.
  • 金谷 元, 伊達 寛敬, 那須 英夫
    1998 年 64 巻 2 号 p. 139-141
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    The effect of fluazinam WP (active ingredient 39.5%, trade name: Frowncide SC) on white root rot (causal agent, Rosellinia necatrix) of grapevine was examined in the vineyard. Fluazinam soil-drench at either 790ppm or 395ppm showed high efficacy against white root rot of grapevine. Treatment with fluazinam at 790ppm after harvest time (October-December) was more efficient than treatment before sprouting time (March). The treatment protected grapevine roots from the disease for at least half a year even in highly infested soil, and was not phytotoxic against grapevine.
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