無病徴のニホンナシから抽出した核酸を5%ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分析したところ,特定の品種から抽出した核酸にのみ特異的に共通して3本のバンドが認められた。これらの核酸は,樹皮,葉,花弁そして花弁を含む花から検出された。これらは,DNase Iによって消化されず,RNase Aに対しては,2×SSC下では消化されず,0.1×SSC下で消化された。さらに,15%エタノール存在下でCF-11セルロースパウダーに吸着された。以上の結果から,3本のバンドは2本鎖(ds) RNAであることが判明した。イネ萎縮ウイルスのdsRNAをマーカーとした実験により,分子量はそれぞれ1.08, 0.97, 0.90×10
6と計算された。また,dsRNAが検出された数品種は親子関係にあるため,交配による後代への伝染を調べた。その結果,dsRNAを種子親だけが持っている場合は40検体中31検体から,花粉親だけが持っている場合は12検体中12検体から,両方が持っている場合は5検体中5検体から,dsRNAが検出され,高い確率で後代に伝染することが判明した。しかし,本dsRNAsの接木伝染は認められなかった。これらの知見から,本dsRNAが種子伝染性潜伏ウイルス由来であることが示唆された。
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